物心ついた頃にはもう褒められるよりも叱られたいと思っていた。
原因があるとすれば、なにかにつけて過剰に褒めてばかりいた親の躾方針か。
あまり褒められすぎるのも子供心に不安をおぼえてしまう。

普通じゃないことは理解していた。


しかし成長するにつれ叱られたいという願望は薄れていき、妻との恋愛を経て結婚。
どこにでもいるごく普通の夫となった。


はずだった。


異変は妻が週末のみの塾講師という仕事を始めてから。
在宅塾ということで家に集まってきた小学生に勉強を教える形なのだが、広い家ではないため声は筒抜け。
聞き分けのよい子供ばかりではない。
部屋でくつろいでいると、妻が子供を叱っているらしき声が耳に入ってきてしまうのだ。

『また宿題を忘れたのね、いけない子。』

最初は特に気にしていなかった。
ただ突然、思い出したように自分がMであったことを自覚してしまうと、そんな妻と子供のやり取りが気にならないわけはない。
妻の前では普通の夫を演じている。
叱られている子供が羨ましい。
悶々としても今の生活を壊す気はないので、今後も妻には秘密で通すと決めている。
妻が叱っている対象をつい自分に置き換えて想像し、勃起していることもあった。
なるべく不審がられないよう性処理を避けていたため鎮めるのにも一苦労。
むしろ鎮まっていたうちはまだよかったのだが。

『△△△クンがね、いっつもテキスト家に忘れたって~。』

『今日もまたやったら、ビシビシお尻を叩いてやらないとね。』

妻が不意に放ったひと言でテーブルの下のモノがはち切れんばかりに勃起してしまった。
理解しがたいかもしれないがMにとっては想像するだけでたまらない状況なのだ。
なんとかその場をやりすごし落ち着くまで部屋に戻って塾が始まるのを待つ。
子供たちがやってきて、妻の『また忘れたの~?』が聞こえてくる。
しばらくして、妻が男の子をひとり連れ塾の部屋とは離れた奥の部屋に消えていった。
妻がビシビシお尻を叩くと言っていた男の子に間違いない。
トイレへ行くふりをして近くへ行ってみると、運良く妻が入り口にほぼ背を向ける形でドアも半開き。
男の子は床に座った妻に抱えられるように尻を丸出しにしてバチバチと叩かれていた。
痛いのか、叩かれるたびに背中を反らせて逃れようとしている。

『せんせ~、もうちょっと優しくしてよ~。』

『ダ~メ。今日で何回続けてだと思ってるの、反省しなさい。』

十か二十ほども叩けば許してやるものだと思っていた。
しかし妻は叩くのをやめず、優しい口調と裏腹に男の子のお尻は熟れすぎた桃のように大きく腫れている。
気付かれる前に早々に立ち去るつもりだったはずが。
いつ見つかってもおかしくないぐらいの特等席で最後の最後まで鑑賞してしまった。


隠れM男にとっては至福の時間だったと言える。