その彼女もまた、俺の昂ぶりに舌を這わせはじめる。
亀頭をちろちろ舐り、筋を擦り、たまにカリ首までを咥えこむ。
稚拙な頑張りだったが、先端部ばかりを責められるとつらい。
「もうちょい根元も、頼むわ…」
今にもイキそうで音を上げると、彼女は全体をぎゅっと握ってきた。
押し出されるように射精しそうになる。

彼女も余裕が無かったんだろう。
「頭…変になりそう」
俺の物をしごきながら、何度かそう呟いていた。
指を一本、二本と差し込めるようになると、
その白い膝ががくがくと笑い始める。
もたれてええよ。そう声を掛けると、ずしりと重みが増す。
彼女が堪えていた重さだ。
ぐったりしながらも健気に支えてたんだな、と感慨深かった。

それからまた長い時間、俺と彼女の舌はあちこちを這い回った。
直接性器に当たらなくても、内股や恥骨でも同じくらい感じるようだ。
反応のいい娘だから、嬲るだけで技術が向上しそうに思える。
茂み全体が艶光りはじめ、薄く露が頬に垂れてきた。
「そろそろ、大丈夫だとおもう」
はぁはぁと荒い息を吐きかけながら怒張を含んでいた顔が、
こちらを振り向く。
眉は垂れ下がり、淡い唇も締りが無いが、愛らしい。
でも、つい数時間前の顔とは、輪郭から何から全く違って見える。
女は色々な表情があるな・・。
数秒か数分か見とれてしまい、
彼女の焦れたような瞳を見て意識が戻る。

再び向かい合わせになり、寝かせた彼女の両脚に腰を滑り込ませる。
いくよ、と声を掛けたのに対し、琉希は目で覚悟していた。
汗ばんだ彼女の太股を押さえ、ゆっくりと腰を沈めていく。

熱い。
下半身の前部が蕩けそうなほど、温かさに圧される。
背中を外界に留めたまま、母胎に還っていく感じだ。
あれだけ濡らした甲斐あって、中ほどまではすんなりと進む。
「どう、痛ない?」
ここでダメならどうしようもないが、一応聞いてみる。
「まだ大丈夫…。まだ」
必死にひきつった作り笑いをする彼女。
暴言を吐かれた後も、モニター前でその表情をするんだろう。
これからがつらいと、一番よく分かっているはずだ。

彼女には悪いが、ここからは一気に行った方が痛みが少なくてすむ、
と何かの本で読んだ気がする。
俺もじわじわ苦痛を味あわせるよりはいいと思った。
どちらにせよ、あの子の顔が引き攣るのを見なくてはならない。
それは心苦しいが。
シーツを握りしめる琉希の手のひらに触れ、皺を合わせた。
「大丈夫や。大丈夫やからな。」
そんな言葉しか掛けられず、手を強く握り締める。

「…っ…ぃ… …っ…、……ッ…!!」
勝気な少女は泣かなかった。
白い歯を食いしばり、人を和ませる文字を打った腕が戦慄いていた。
ひとつまたひとつ、子を為す細胞がぶちぶちと死んでいく。
親父お袋、彼女の御両親、ごめんなさい。
子供の頃は、処女を奪うという行為に憧れていた。
好きな子相手なら尚のこと。
でも俺のような男には、荷が重過ぎる。
二度としたくない。

ごめんな。  それが言えなかった。
とても失礼な気がしたから。
欲情に似た、でも全く違う興奮を抑えきれず、俺は呆けていた。
じっと、琉希の苦渋が和らぐのを祈るように見ていた。
彼女の薄目が開き、ひとつ光る筋がこぼれて唇が動く。

「入ったねぇ。」
独り言をつぶやく風に、そう囁く。
唄うような口調だった。
「痛ない…いや、その…平気、か?」
痛くない筈がないのに聞こうとし、しどろもどろになる。
「…おかげさまで。もうちょと、動いてもえぇよ」
息を弾ませながら、彼女は俺に笑いかけた。
実際、俺も引き抜いただけで逝ってしまいそうだ。
少しだけ、腰を引いてみる。
腰が抜けるかと思う快感が尾骨にずーんときたが、
少しすねたような琉希の表情はよく覚えている。

少しずつ緩急をつけながら腰を打ちつけ、
鎖骨に首筋に頬に唇に、首の届くあらゆる白肌に吸い付いた。
「気持ちいいよ、きもちいいよ。。」
嘘だろうと分かったが、琉希はそう囁きつづける。
ここへ来ていよいよ、俺は自分が肌を合わせているのが誰なのか、
本当の意味で自覚しはじめていた。

長い間、ネットの向こうで共に暮らした相手。
現実よりも素直な自分で触れあった、第二の人生での初恋相手。
運良く、現実の彼女は見目麗しかった。
だが、こうして中身で繋がると関係がない。
薄っぺらい画面に映ったデフォルトの“琉希”が、
きつく俺を迎え入れる、暖かな血肉に塗り替えられていく。

     好きだ   琉希

俺はその言葉を、背筋を反らせると同時にねじ殺した。
泣きそうになる。
この世界で親密になることは、決して許されない。

俺は、既婚者で、へタレで、チビで、 ギルドの長だ。

エコナ:でも彼女、男の人と出かけるの慣れてないし。
    気つかったっていってましたよ。普段通りかな?ってw
麗音 :mjsk カナリ自然体だったけどな
エコナ:あ、それとそれと…言っちゃおうかな(ニヤニヤ
麗音 :な、んあんだよ^^;?
エコナ:彼女、感激してましたよぉw 「マスターに頼んでよかった」ってww
麗恩 :・・・・・・・ナッ・・・・・・・

あれから数日後。
急に姿を現さなくなった琉希の相談をするつもりが、思わぬ地雷。
俺は赤くなった頭を抱える。
そのまま電源を切ろうとしたとき、チャイムの音が響いた。
嫁がバタバタと走って出る。
そして、俺がまたPCに向かった時だ。
「おぅ、いらっしゃい!!」
嫁のやけに元気のいい声に、思わず扉を凝視する。
そこには、さらさらの黒髪と、溌剌とした瞳。

そして、俺のように真っ赤な顔が覗いていた。