その日の謁見の間には、下座とはいえ不釣合いな少年がひれ伏していた。

「……で?」

この季節になると珍しくない光景だ。
返答はだいたいわかっているが、領主の女は少年に問う。

「わ……我が家では今年の税が支払えなくて……その……
蓄えもなければ、お借りしている土地以外に財産もなく……くっ」

「それで、来年まで何もなしに、阿呆のように私に待っていろとでも?」

「め……めっそうもございません! ……ですが、先ほども申しましたように、
私どもの家にはお金などございません……うっ……。
そ、そこで……かっ、代わりといっては何ですが……これを……」

少年は顔を伏せながら起き上がり、震える両手を差し出した。
赤いベルベットの布の中に、薄桃色の丸いものが2つ乗っていた。

「なんだ、これは?」

「わ……私の……おと、男として……もっとも大切なものであります……」

「ほう」

「り……領主様におきましては何の価値もないものとは存じておりますが、
せめて私の持っているものの中で、一番大事なものを献上せねばと……ううっ!」

恐れおののいているだけではない。この少年は、今しがた刃を入れた、
自分の股間を襲う痛みに口ごもっているのだ。

侍女が少年からベルベットごとそれを受け取り、女領主のもとへ運ぶ。
女領主はそれを物怖じすることなくつまみ上げると、
目の前でブラブラと揺らしながら眺める。

「こんなものがお前の一番大切なものと?」

「は……はい……恐れながら……私の命以外には、
もうそのようなものしか……」

「これがおまえのであるという証拠は?」

「ご覧ください……失礼致します」

少年は立ち上がり、腰まで隠していた上着をたくし上げた。
下には何もはいていなかった。
少年が縮み上がった小さなペニスを摘み上げると、
その根元には荒い縫い目がついているだけで、他には何もなかった。

「先ほど、侍女の方に取っていただいたばかりです」

「ふむ。確かにおまえのもののようだな。ということは、
こいつは平民の子種がつまっているだけの、
本当に何の価値もないものということだな」

「……仰せのとおりで……あっ……!」

女領主が無造作に、献上されたそれを投げ捨てる。
それに反応して、領主の足元にいた犬がそれを追い、
床に落ちた2つの小さな肉をペロリと平らげてしまった。

「ああ……」

「なんだ? 私のものをどう扱おうとかまわないだろう?」

「ううっ……も、もちろんでございます……」

少年の目に涙が浮かぶ。

「ふん、あれだけではアリッサのおやつ程度にもならんな」

「……」

「こんなもので税を免れさせるわけにはいかんな」

「そ……そんな!」

「おまえ、さきほど自分の男として一番大事なところを献上したといったな?」

「は……はい……」

「出し惜しみしておいて、税を免除してもらおうとは虫がいいとは思わんか?」

「えっ……?」

「わからんか? 男として大事なところ、あれだけではないだろう?」

「そ、それはもしや……」

「おまえのつまんでいたそれ、まだ残っているではないか。
アリッサはまだ空腹のようだぞ」

少年は自分のペニスをつまみ、真っ青になりながら女領主に聞いた。

「あの……これを献上すれば税のことは……?」

「二言はない。ただし、アリッサは踊り食いが好きでな。
この意味は……わかるな?」

少年は大粒の涙をぽろぽろとこぼしながら、
足を開いてその場にかがみ、腰を突き出すような格好をして犬を誘った。
痛みに暴れて領主の飼い犬に粗相をすることのないよう、
2人の侍女が少年の肩と足を押さえる。

「おいで、アリッサ……僕の……召し上がれ」

雌犬が呼ばれたことに気づき、ゆっくりと少年に近寄る。
股間に鼻を寄せて、フンフンと匂いをかぐ。

「アリッサ、よし」

女領主の許可を得たアリッサは、少年の男としてもっとも大切な場所の
最後の部分を、先端から少しずつ噛み千切り、租借していった。
まるでゆっくりと何度も噛み千切り、少年に何度も悲鳴を上げさせることで、
飼い主が喜ぶことを知っているように。

それでも小さな肉、1分もしないうちに根元まですべて平らげて
雌犬はその場を離れて、女領主の足元で再び昼寝を始める。
少年は股間から血を流しながら、その場で倒れ放心していた。

「よし、今回は税は待ってやる。以上だ。
そいつの血を止めて城から放り出しておけ」

侍女にひきずられて少年が退室する。
見世物にそこそこ満足したように、女領主は侍女に尋ねる。

「よし次。今日はアリッサが満腹になるまで、
あと3人はいけるだろう。面倒だ、まとめて通せ」

領主への謁見はまだまだ続くだろう……。