【下の話の続きです】
同級生を奴隷にした話


同級生を奴隷にした話2


同級生を奴隷にした話3


同級生を奴隷にした話4


同級生を奴隷にした話5


同級生を奴隷にした話 6


約束の日曜日、
援助交際男の待ち合わせより2時間早く、俺は詩織と待ち合わせた。
俺が待ち合わせ場所に行くと、詩織はいつものように
俺より先に待ち合わせ場所にいた。

「待ったか」

「…ううん…今来たところ…」

詩織は、いつも通り待ってはいないことを強調した。

日曜日であり、俺が念のため私服を指示したこともあって
詩織は私服だった。

今まで、近所のコンビニに行くときのようなラフな私服姿の詩織は見たことがあったが
まともな外出着姿の詩織は、そのとき初めて見た。

詩織は、黒のチノパンのようなズボンの上に
白いミニのティアード・スカートを履き
グレーのタートルネックのニットの上に、白のVネックのニットを重ね、
その上に、厚手のツイード地の凝ったデザインの
高そうなジャケットを着ていた。

当時、ズボンの上にスカートを重ね着したり
ニットの上にニットを重ねる奇妙な服装が流行っていた頃だった。

初めて見る詩織のまともな私服は、
意外にも、しっかりと流行を取り入れた服装であるばかりか
周囲の女性よりも、ずっと華やかでお洒落だった。

華やかな服が、抜群に整った顔とスタイルを
より一層引き立てていた。

その日の詩織は
よく言えば真面目、悪く言えばダサい印象の制服姿とは全く違い
華やかなので、俺はかなり驚いた。

人目を引く詩織を見て、
本来ならこの女は、俺には高嶺の花なのだと
改めて思った。

思わずその場でデジカメを取り出し、詩織の立ち姿を一枚写真に撮った。

有名待ち合わせスポットは休日らしい混雑ぶりだった。
大勢の人の前でカメラを向けられた詩織は
一度、恥ずかしそうに俯いて照れ笑いしたが
その後、穏やかに微笑む目線をカメラに送ってくれた。

「ここじゃなんだから、喫茶店でも行こうぜ」

「…うん…」

写真を撮り終えた俺は、詩織を連れて喫茶店に向かった。
その週は、喧嘩別れのようになった
前回の一度しか詩織を呼び出していなかった。
このため、詩織と話すのも久しぶりだった。

近くの静かな喫茶店に向かう道すがら
俺は詩織の服装を褒め、人の多い待ち合わせ場所でも
誰よりも目立っていたことを言った。

俺があまりに直球過ぎる褒め方を続けたので
大人しい詩織は、照れ笑いするだけで返答に困っていた。

俺は必要以上に詩織を持ち上げ
いつも以上に口数も多かったと思う。

今振り返ってみれば、俺は詩織を深く傷つけた負い目が多少あったので
その後ろ暗さを覆い隠すために
俺は詩織を褒めちぎり、いつもより余計に詩織に話しかけたのだろう。

だが、当時の俺は、自分の振る舞いの不自然さには気付いたものの
その原因を自分の心に向かって探すことまではしなかった。

並んで歩いたとき、詩織から香水の匂いがしなかったので
そのことを聞いたら

「…あの…お母さんが…まだ香水は早いって…言うから…」

と詩織は答えた。

詩織の母親は、香水は、男を誘惑するための媚薬だとでも思っているのだろうか
どうやら、彼女の母親は、俺とは違う常識を持つ人のようだ。

喫茶店で、俺たちはしばらくファッション談義をした。
詩織が言うには、今日の服も、
実はそんなにお金がかかっていないとのことだ。

確かに、ニットなどは安物と言われても納得できないこともないが
ジャケットは作りも凝っており、どう見ても安物には見えない。

俺が、ジャケットはずいぶん手が込んでいるように見えると言うと

「…これ…この前のクリスマスに…お父さんが…買ってくれたの…」

と、困ったように笑いながら答え
ジャケットだけは高額であることを匂わせた。

プレゼントされたものの金額について話すのは無粋かと思い、
俺は、すごくいいと褒めるだけに留め、金額の話は避けた。

相変わらず家族仲のいい、暖かい家庭のようだ。
俺の両親は、ついこの前のクリスマスも遅くまで仕事で、
二人とも家で食事をしなかったというのに。

喫茶店で対面に座り、正面からよく見ると
詩織は化粧をしていた。
化粧は眉毛を書き、マスカラを付け、唇に色を付けているだけのようだ。
ピンクとオレンジの中間のような唇は、テカリからしてグロスだろう。

また、詩織はピアスやイヤリング、指輪などの
アクセサリーは身に付けていなかった。
そもそも、詩織にはピアスの穴自体が開いていない。

最後に付き合った元彼女が、
休日となれば、フルメイクになり
ピアスや指輪などのお洒落も楽しんでいたことを考えれば
この辺は、やはり詩織らしいと思った。

しかし色白で肌の綺麗な少女は
剥いたゆで卵のような地肌だけでも十分であり
整った目鼻立ちは、黒のマスカラとピンクのグロスだけでも、
周囲の女性よりも、ずっとハッキリした顔立ちに見えた。

詩織は、学校ではすっぴんなので、一応
詩織に今日は綺麗だと褒め
グロスが似合ってるとだけ言って褒めるだけにした。
実際、本当に似合っていた。

「…最近…周りの子が…みんな…お化粧始めたから…
…私も…始めなきゃと…思って…
…まだ…勉強中…なの…」

と赤くなりながら、詩織は言った。

フルメイクではない女性に、男が化粧の話題で突っ込みすぎると
あまりよい結果にならないことが多い。
俺は、化粧についてそれ以上突っ込まなかった。

詩織は、この前の落ち込みぶりが嘘のようで
まるで何事もなかったように、
いつもの穏やかでゆっくりした口調と、優しそうな笑顔で
俺の話に応えてくれた。
詩織は、基本的に誰に対しても対応をあまり変えない、いいやつだった。

俺は、頭では、詩織をメス犬と罵ってはいるものの
心では、詩織がいつも通りに接してくれ、
いつも通りに笑ってくれたことに
内心、相当喜んでいた。

取り留めのないファッション談義の後
俺は本題の話を詩織に切り出した。

「突然でなんだけどさ。
今日は、おまえにサポやってもらうから」

穏やかな笑顔で話をしていた詩織から
一瞬で笑顔が消え、驚愕の表情で俺を見た。

顔を強張らせ、目を見開いて
しばらく俺を見つめていた詩織だったが
やがて、いつものように暗い顔で俯き
ぽろぽろと涙をこぼし始めた。

「………分かった…」

涙をこぼしながら、詩織は承諾した。
ハンカチを取り出して涙を拭く詩織の手は、
震えていた。

「何泣いてんだよ。
おまえがOKしたから、俺がセッティングしたんだろ?」

「……うん……ごめんなさい……」

嗚咽することなく、静かに涙を流しながら
詩織は謝った。
そのまましばらく、詩織は静かに泣き続けた。

涙を流す詩織を見て、
もしかしたら、まだ援助交際を止められるかもしれないと俺は考えた。
そう考えると、俺の心がいきなり踊りだすのが分かった。

あと2時間足らずで援助交際の男と待ち合わせるという、そのときになって
俺はようやく、本心ではいまだに詩織の援助交際を望んでおらず
この期に及んでも、詩織の援助交際中止を強く望んでいる自分がいることに気付いた。

なぜ、内心ではメス犬の蔑んでいたこの女が、
これから援助交際しようとするのを、これほど中止させたいと思うのか。

なぜ、心の中ではメス犬と罵倒していた詩織と和やかに話せて
俺は相当嬉しかったのか。

もし、詩織を心から軽蔑しているなら、
詩織がどこまで落ちようと、俺が苦しむはずがない。
詩織が罵倒に値する人間なら
詩織と和やかに会話できたことを、俺が嬉しく思うはずがない。

今日、詩織と楽しく話し、そして詩織を泣かせることによって
俺はようやく、自分自身の感情に大きな矛盾があり
詩織を軽蔑に値する人間と位置づけてしまうと
俺自身の感情変化に説明がつかないことに気が付いた。

もう詩織が他の男と性行為をすることは仕方ないものとして
自分では割り切ったつもりだった。
割り切れたと思ったからこそ、援助交際の段取りを整えた。

しかし実は、それは自分で自分を騙していただけに過ぎず
結局、本心では全く割り切れていなかった。
俺は、自暴自棄になっていただけだった。

援助交際の当日になって、俺はようやく自分の心と向かい合い
子供っぽい自分の行動の本質に気付いた。

「泣くほど嫌なら、止めればいいじゃん。
無理することないぞ」

「…ごめんなさい………でも…大丈夫…だから…」

「サポでドタキャンなんて普通だし
今からでも止められるぞ」

「…ありがとう…………でも…私……平気だから……」

ようやく、自分の本心に気付いた俺は
詩織の援助交際を止めようとして、そんなことを言った。
しかし、詩織は「止める」とも「嫌だ」とも
言ってはくれなかった。

詩織は俺の奴隷であり、俺には絶対服従なので
俺が中止だと言えば、援助交際は中止になるだろう。

しかし、そのためには
ここまで段取りを整えておきながら、俺は前言を撤回する必要がある。

前言を撤回するということは
男が一度言い出したことを引っ込めるということであり
そのためには、俺の男としてのプライドを犠牲にする必要があった。

見栄やプライドなどかなぐり捨てて、
なりふり構わず止めれば、ずっと気は楽になるのだろうが
当時の俺は、そんなことが出来るほど心が大きくなかった。

結局俺は、つまらない見栄にこだわり
自分自身、苦しみながらも
「男が一度言い出したこと」を引っ込めることができなかった。

自分の苛立ちを全て詩織のせいにして、
トラブルの原因全てを詩織の責任を押し付けたときと同じく
俺は相変わらず、度量の小さい男だった。

大して格好良くもない俺が、華やかな美少女を泣かせているので
喫茶店内の客の視線は、俺たちの席に集まった。

周囲のカップルは、こちらをチラチラ見ながらヒソヒソ話を始めた。
どうも、修羅場らしき現場を目撃して、下世話な話で盛り上がっているようだ。
周囲のカップルなどをチラッと見ると
毎回のように目が合った。

さすがに居辛いので、
注文した飲み物を飲み終えていなかったが
俺たちは近くの公園に場所を移した。

冬の肌寒い公園には、ほとんど人がいなかった。
俺たち二人が誰もいない公園のベンチに並んで座る頃には、
詩織も泣き止んでいた。

詩織は俺よりもずっと寒さに弱い。
また俺は、詩織を傷つけた後ろめたさもあったので
自分が着ていたハーフコートを詩織の膝の上に掛けた。

「…あの…ありがとう…でも…佐藤君…寒くないの?…」

「ああ。大丈夫だよ
俺、暑さとか寒さとかには、結構鈍感だから」

強がってそう答えたが、
さすがに真冬の公園でコートを脱ぐと、寒さが身に堪えた。

詩織は、俺にくっつくぐらい近寄って座り直し
自分の膝の上に掛かっている俺のハーフコートを、俺の膝にも半分掛けた。
これから自分を売春させようとする男に対しても
詩織は優しかった。

詩織が優しくしてくれ、穏やかに笑いかけるほど
この強姦犯人にも優しい、生真面目で心優しい少女が、
これから援助交際をするという事実が俺に重く圧し掛かり
しかもそれが俺の段取りによるものであるという事実が
俺を苦しめた。

何はともあれ、周囲の目が気にならなくなったので
俺は詩織に細かい段取りを教えた。

段取りを教えるなど、全く気乗りしない作業だった。
しかし、既にここまで話も進んでしまっているし
このまま詩織が突き進むという最悪の状況も十分ありえる。

詩織の本当の身元を相手の男から隠す方法など
俺たちの身を守る方策を、詩織に教えないわけにはいかなかった。

俺の携帯にサブアドを設定したから、
それを使って援助交際男とのメールのやり取りをするようにということ。
送信時、相手アドレスに特定の文字列を追加すること。
くれぐれも直送でメールを送らないこと。

男が来たら、詩織が中年オヤジに犯される場面を俺も見たいから
そのように交渉すること。

詩織ではなく「なつみ」の偽名を使うこと。
同様に、俺のことを「まさき」と呼ぶこと。

俺たちの関係を説明するのは大変なので、
便宜上、俺のことを彼氏として紹介すること。

そして、嫌だと思ったらすぐ俺にすぐ言うことを
詩織に伝えた。

嫌だと思ったら俺にすぐに言うようにと
詩織に言ったのは
本心では援助交際をさせたくなかった俺の最後の希望の綱であり
詩織に伝える注意事項の中に、当日になって急遽付け加えた項目だ。

どうか、途中で嫌がってほしい。
そう思って、このことを詩織に伝えた。

援助交際の代金の取り分をどうするかについて詩織に聞いたら

「…佐藤君にあげる…私…そんなお金…いらない…」

と詩織は答えた。

俺としては、仲介手数料の10%を俺の取り分とし
残りは全て詩織に渡すつもりだった。

匿名掲示板なので正直に言うが、
俺はいきなりの収入増に心が躍った。
今後、定期的に援助交際をやらせるのも
悪くはないかと、少しだけ思った。

しかし、金の魔力による高揚感も長くは続かず
また俺は、これから詩織が援助交際をするという苦痛に苛まれ始めた。

「おまえ、これから中年オヤジに全裸にされて
体の隅々まで見られるんだぞ。
大丈夫か」

「……うん……」

「初めて会う男に、大股開かされて、
マンコの匂い嗅がれて、マンコ舐められるんだぞ
覚悟は出来てるか?」

「……うん……」

「もしかしたら、中年オヤジはおまえに
四つんばいになって、マンコをオヤジのほうに向けて
お尻振れって言うかもしれないぞ
おまえ出来るのか?」

「……うん……」

「見ず知らずの中年オヤジのチンコを、マンコに入れられるんだぞ?
本当にいいのか?」

「……うん……」

刻一刻と援助交際の時間が近づいていく中
俺は、詩織に何とか嫌だと言わせたくて
詩織が嫌がるようなことを言った。

しかし、手を震わせ、涙を流しながらも、
詩織は一度も嫌だとは言ってくれなかった。

ふと俺は、詩織の下半身を確認したくなった。
俺のハーフコートが掛けられ、コートで隠されている詩織のズボンの前を開け
詩織のパンツの中に手を差し入れてみた。
性奴隷の詩織は、主人である俺が局部を触りやすいよう、股を開いた。

下着の中に手を入れてみると、詩織の局部は既に十分濡れていた。
濡れた詩織の局部に触れ
俺は、絶望と同時に、異常な興奮を覚えた。

「…分かった…でしょ?…私…最低の女…なんだ…
……………………メス犬…だから………
…援助交際ぐらい………平気…だから……」

震える声で詩織はそう答え、言い終わると一層激しく泣き出した。

いつから濡れ始めたのかを聞いたら
俺が変なことを言い始めてからだという。

皮肉にも、俺が詩織から援助交際の拒絶の言葉を引き出そうとした行為が
逆に詩織への言葉責めになってしまっていた。

詩織の濡れる局部に触れ
不自然な性欲で異常興奮していた俺は、
欲望に完全に支配されてしまっていた。

俺にとっての最重要事項は、
今まさに堕ちて行こうとする詩織の心配から、
燃え立つほどに湧き上がった性欲の発散に変わってしまった。
こんな男だから、強姦事件など起こすんだろう。

相変わらず人影のない
青空の広がる肌寒い公園のベンチで
冬の陽の光の中、俺は詩織の局部を弄び始めた。

詩織の愛液の付いた指で
詩織のクリトリスを優しく愛撫した。
俺が愛撫を始めると、詩織は俯き、涙の零れる目を閉じた。
陽の光が当たり、冬の冷たい風に揺れる詩織の髪が綺麗だった。

「…ん……あ………」

目を閉じ、端整な顔を少し俯かせ、
眉間に皺を寄せながら
詩織は、切ないような声を漏らし始めた。

詩織の悩ましい声を聞き、
頭は絶望で冷え切りながらも
我慢できないほどの強烈な興奮が込み上げて来た。

もはや本能に従う以外の選択肢がなかった俺は、
詩織の手を引いて公園のトイレへと向かった。

詩織に女子トイレに人がいないことを確認させ
トイレに二人で入る瞬間を誰にも見られることのないよう
周囲に人影がないことを十分確認してから、
俺たちは女子トイレに入り、二人で一つの個室へと入った。

女子トイレを選んだのは
公園の男子トイレが時折、利用される可能性があるのに対して
女子トイレを使う人は、ほとんどいないだろうと思ったためだ。
女性は、公園のトイレの危険な雰囲気があまり好きではない。

女子トイレと男子トイレは
隣り合わせではあるものの、建物自体は分かれており
大きな声を出さない限り
男子トイレにまでは、詩織の声は届きそうもなかった。

青空の広がる昼前の公園から、薄暗い女子トイレの個室に急に入ると
トイレは本来よりもずっと暗く感じた。

薄暗い洋式トイレの個室の鍵を掛け
俺はズボンとパンツを下ろし、詩織に奉仕を命じた。

詩織は俺の前にしゃがみこみ
玉舐めなどのフェラチオの前戯もそこそこに
俺の肉棒を、その可愛らしい口に含んだ。

ニットを捲り上げられ、ブラの隙間から入れられた男の指で
乳首を弄ばれながら
まるで何かを吹っ切りたいかのように
詩織は、必死に肉棒への奉仕を続けた。

清楚な雰囲気の詩織には似つかわしくない、
一心不乱のフェラチオだった。

しばらく詩織に奉仕させた後、俺は詩織に
ズボンとスカートとパンツを脱ぐよう命じた。
詩織はバッグをトイレの床に置き、一度ブーツを脱いでから
ズボンと下着とスカートを脱ぎ、床に置いたバッグの上に脱いだ衣類を畳んで置いた。

服を脱ぎ終え、下半身裸になった詩織を
俺は洋式便器に座らせた。

俺は、洋式便器に座る詩織と向かい合わせになってしゃがみこみ
詩織の両足を持ち上げ、詩織の太ももを俺の肩に掛け、
詩織の局部に舌を這わせた。

洋式便器に座る詩織は、足を大きく持ち上げられ、
開かれた股間に男の顔を埋められ
恥ずかしい部分を舌によって犯され始めた。

「…んっ……んんっ……」

舌が詩織の局部を蹂躙するのに応じて、詩織が声を漏らし始めた。

詩織の花弁は、詩織という女の性を象徴するかのように
愛液で濡れて光り、ぷっくりと柔らかそうに開かれていた。
露わにされた詩織の花弁の鮮烈なピンク色は、
薄汚れた暗いトイレの中で、一層淫靡に映えていた。

公園の洋式トイレには蓋が付いていなかったので
詩織の頭が、便座の後ろにある洗浄ハンドルの付いた金属製の
銀色のパイプのようなものに当たって痛そうだった。

俺は、いったん局部への責めを中止し、
自分のジーンズを脱いで
詩織の頭の後ろに俺が脱いだジーンズをあてがった

「ありがとう」

とヒソヒソ声で詩織は俺に礼を言った。

よほど寒い時期でもない限り冬でも生足、ハイソックスの女子高生とは違い、
俺は野外での下半身裸には慣れていなかった。
冬の公園の女子トイレでジーンズを脱ぐと、
すぐに寒さが骨身に染みて来た。

じっくり責めることは諦め、俺は手順を大幅に省略した。
じらしたりなどせず、最初からクリトリスと膣を集中的に舐めた。

「………はっ……ああっ……」

詩織の息遣いが荒くなり、声が次第に大きくっていく。
今日の詩織は、声を抑える気があまりないようだった。
俺は声を抑えるよう詩織に言い
そのままピンク色の詩織の局部の味を堪能し続けた。

男の舌で花弁と花芯を陵辱されるときの詩織の反応を十分鑑賞し
詩織の局部の味を満足するまで味わった俺は
詩織の足を下ろし、
便座で用を足すような姿勢から少し腰を前に突き出したような姿勢にさせ
今度は指で、詩織の局部を感触を楽しみ始めた。

同時に、便座に座り、後ろの金属製のポールに寄りかかる詩織の唇に吸い付き、
詩織の口内の味を楽しみながら
手を詩織の背中に回し、ニットの上から詩織のブラのホックを外した。

突然、冷たい掌で体を撫で回されると詩織が驚くので、
ブラのホックを外しても、俺は、すぐには詩織の胸を膨らみを触らず、
これから詩織の胸の膨らみを鷲掴みにする予定の掌を
俺の上着の中に入れて脇の下に挟み、掌を温めた。

掌が温るのを待ってから、俺は詩織のニットの下に手を滑り込ませ、
詩織の臍の辺りを撫で回しながら、ゆっくりと胸の膨らみへと手を伸ばして行った。

胸の膨らみに俺の手が達すると
俺は、詩織の胸の膨らみを撫で回し、胸の突起を指先で転がした。
詩織が胸の膨らみを弄ばれる頃には
局部を弄ぶ俺の指は、詩織の膣内に深々と差し入れられ
詩織の膣内を、自由気ままに陵辱していた。

洋式便器に仰け反るように腰掛けた詩織は
口内を舌で蹂躙され、胸の突起を弄ばれ、
膣内深くを男の指で犯され
俺の唇で塞がれた口から、くぐもった声を漏らしていた。

男の唇によって塞がれた詩織の口がだらしなく開き
公共の場所であることを忘れたかのように声を上げるようになった頃
俺は、膣内を周回するように回していた指の動きを
Gスポットを上へと押し上げる動きに変えた。

俺が詩織を奴隷にした当初、
詩織のGスポットは、ほとんど開発されていなかった。
しかし、連日のように繰り返される陵辱によって
詩織のGスポットは強姦魔である俺により十分開発され
この頃には、詩織の大きな弱点の一つとなっていた。

寒かったので、詩織の体がGスポットへの刺激を受け入れる準備を終え次第
俺は、即座に弱点を責めた。

「…あっ……………ああっ……」

顔を歪め、呼吸を止めて声を漏らさぬよう耐えていた詩織は
突然、俺の唇から自分の唇を離したかと思うと
トイレの外まで聞こえるのではないかというほど
大きな声を上げた。

慌てた俺が詩織の口を塞ぐと、詩織も

「…んんっ……んっ……」

と声を押し殺し始めた。

詩織のニットをまくり上げ、胸を露出させると
俺は胸に吸い付いた。

上着を胸までめくり上げられ、
胸から下を隠す衣類は靴下と靴のみとなった詩織は
片胸を俺の舌で、もう片胸を俺の手で弄ばれ
敏感な部位であるGスポットを責められ続けた。

口元に手を当て、眉間に皺を寄せて声を堪えていた詩織だったが、突然

「……あああっ……」

と、突然、我慢の限界が来たかのように大きな声を上げた。
そのまま、詩織はまた呼吸を止め、

「……ああっ……あっ……あああっ……」

と、息継ぎをするごとに、何度か大きく喘いだ。

つい数ヶ月前、局部を触られただけで涙を流していた清純な優等生は
強姦犯人に繰り返し陵辱され、調教されることによって
体を弄ばれれば、公園という公共の場所であっても
我を忘れて、男に犯される喜びの声を上げるようになっていた。

はしたない声を何度か上げながら
詩織は次第に大きく仰け反って行き、
地面に対して垂直に降ろしていた足を、便座に座りながら次第に伸ばし始めた。

数十秒ほど、便座に座ったまま足をピーンと伸ばし、
全身に力を入れ硬直した詩織は
しばらくして体の力を抜き、脱力したまま息をしばらく止めた後

「……くっ……あっ…はああ………」

と、力が抜け落ちるような声を上げた。

頭に血が上って詩織が大声で喘ぐことの危険性を忘れていた俺だが
詩織が脱力するのを見て、ふと我に返り
詩織のあえぎ声が危険なレベルにまで大きくなっていることを理解した。

俺は、詩織の胸を弄んでいた手を詩織の服の中から引き抜き、
詩織の口を押さえた。

しかし、一方で異常な興奮状態でもあったため、
俺は、Gスポットへの責めを中止する気にはならなかった。
詩織が脱力したのに構わず、
俺は、詩織のGスポットを指で陵辱し続けた。

脱力から2、3分後ぐらいに詩織は

「……ううっ………ぐっ………」

と、また殺しきれない声を漏らしながら、顔を歪めて目を閉じ
洋式便座に座ったまま、また大きく仰け反り始め
足に力を入れ、つま先を宙に浮かせ始めた。

「……ああっ………あっ………あああっ…」

宙に浮かせた足に更に力を込めつつも
詩織はまた、顔を歪ませたまま息を止め
何度か呼吸のたびに大きな声を上げた。

何度か大きな声を上げた詩織は
また体の力を抜いて、踵を床に着けた。
体の力を抜いてから、詩織はまた十数秒間呼吸を止め

「…う…あ………はあ…」

と脱力するような声を漏らした。

しつこく俺がGスポットへの責めを続けていると
詩織は局部を犯す俺の手の手首を掴み

「……もう……お願い………」

と言いながら、首を横に振って、
敏感な部位への責めの中止を懇願した。

「じゃあ、俺にケツ向けて言えよ」

俺がそう言うと、詩織はのろのろと立ち上がり
トイレの壁に手を付いて、尻を大きく俺のほうに突き出した。

俺は、その間に財布からゴムを取り出し
急いで肉棒に装着した。

「…犯して…」

俺のゴムの装着を待って、
下半身丸裸の詩織は、
俺に白くてまん丸な尻を突き出した格好で
陵辱を懇願した。

背中の真ん中辺りまでジャケットとニットを折ってめくり上げ
背中までむき出しになった詩織下半身の中心部である秘所を
俺は肉棒で貫いた。

「……あっ……」

下半身を剥き出しにされた詩織は
突き出した局部を肉棒に貫かれ、声を上げた。

肉棒で突くときに俺に当たる詩織の尻は
冷えていて冷たかった。

俺が肉棒で詩織の膣内の味を堪能し始めると、詩織は

「…んっ……んっ……」

と声を漏らし始めた。

午後の早い時間ということもあり
女子トイレの個室は、まだ明るかった。
薄汚れたトイレで、剥き出しにされた尻を男に突き出して、
必死に喘ぎ声を抑える詩織の乱れた姿が、はっきりと見えた。

今、俺が見ている詩織の女としての一面を
これから中年オヤジも、いやらしい目で眺めるのか
絡みつくように柔らかく、蜜の溢れる詩織の膣内の味を
これから、見ず知らずの中年男も味わうのか

詩織を後ろから肉棒で犯しながら、
俺はふと冷静になってそんなことを考えた。

そうなると、どうにも遣る瀬無い気持ちになってしまい、
俺はなかなか果てなかった。

「……んっ……んっ……んっ……」

そんな俺の気持ちなど知らない詩織は、口を押さえ
俺の肉棒の律動に合わせてリズミカルに
押し殺すような声を上げ続けた。

底冷えする冬の公園のトイレの個室の中で
グショグショに濡れた詩織の膣内だけが暖かく
薄暗いトイレの乾いた空気の中で、
詩織のくぐもった喘ぎ声だけが響いていた。

しばらく詩織を犯していると
詩織は膝が砕けて立っていられなくなったので
俺は詩織の尻を持って詩織を支え、詩織を後ろから犯し続けた。

「…うっ………あっ……ああっ……ああっ…」

詩織がまた、声を大きくし始めた。

自暴自棄にも似た不思議な興奮状態だった俺は
詩織が大きなあえぎ声を上げていたのは分かっていたが
詩織を咎める気にはならなかった。
それどころか、興奮を加速させる詩織の淫らな声をもっと聞き
今目の前にある快楽を貪ることで、全てを忘れたいような気分だった。

そのまま詩織を犯し続けていると、詩織は壁に手を突いてもいられなくなり
下半身丸裸で、男に向けて尻を卑猥に突き出した格好のまま
頬をトイレの壁に押し付けるようになった。

見つかったら見つかったでいい。
とにかく今は、詩織の体を楽しもう。

冷静さを失った俺は、
詩織のはしたない声、詩織の乱れた姿、
蜜を溢れさせる詩織の膣内の感触に意識を集中させた。

「……あああっ……あああっ……あああっ…」

詩織も、肉棒で突かれる度に
俺の部屋で犯されるときと変わらないような、
大きな声を出すようになっていた。

やがて俺の中でも快感がこみ上げてきて
ついに詩織の中で果てた。

いつものように、行為が終わって俺が手を離した途端、
その場でへたり込まれては、詩織が怪我をしそうだったので
俺は体を支えて詩織を便座に座らせた。

まずは、寒さに弱い詩織に服を着せようと
俺は、便座に座り込んで呆ける詩織の局部や太ももを
トイレットペーパーで拭いた。
詩織の蜜は、靴下にまで垂れていた。

拭き取りを終えた俺は、便座に座る詩織のブーツを一度脱がせて、
下着とズボン、スカートを履かせた。
詩織は、着せ替え人形のようになすがままだった。

服を着せてもらった詩織は

「…あの…ありがとう…」

と小声で俺に礼を言った。

その後、俺の方の肉棒のゴムを取って
肉棒を詩織に無言で突き出した。

すっかり性奴隷として調教された詩織は
俺に命じられなくても
便座に座ったまま上半身を前に倒し
自分を犯した肉棒を、小さな口に含み、
いつものように自らの口で男の肉棒の掃除をした。

詩織が肉棒の掃除を終えるのを待って
俺は自分の着衣を正した。

射精して冷静さを取戻し、服を着て非日常から日常に戻ってみると、
詩織が大きな声を上げるのもかまわず肉棒で詩織を突きまくったことが
急に恐ろしくなった。

詩織が大きな声を上げたので、誰かに気付かれたのではないか。
もしかしたら、周囲に変態男がいるのではないか。
そんな不安が過ぎり、これに対処するための手立てを考え出すことで
にわかに俺の頭は忙しくなった。

まずは先に詩織をトイレから顔だけ出させ、
見える範囲に女性がいないことを確認させた上で
俺が先にトイレから出た。
俺が出た直後、トイレの個室に鍵を掛けるよう詩織に命じた。

トイレ出口から周りを見渡し、女子トイレの建物を一周してみたが、
真冬の公園は相変わらず閑散としており
トイレの周りどころか、公園内にさえ人影はなかった。

安全を確認した俺は、詩織をトイレの外へと呼び寄せた。

予定にない性行為をしてしまったので
俺たちは昼食を食べる時間がなくなってしまった。

食事を買って、ホテルで食べるか詩織に聞いたところ
食欲がないからいらないとのことだった。

俺も、とても腹に何か入れる気分ではなかったし
詩織が中年男に陵辱される場面を見ながらの食事など、
とても無理なので、俺たちは昼食を省略した。

しばらくデパートに入って冷え切った体を暖めた後
俺たちは、援助交際男との待ち合わせ場所に向かった。

「本当にいいのか?
サポなんて、やろうと思えばいつでも出来るし
迷ってるなら今回はキャンセルするぞ?」

「…うん……大丈夫………」

待ち合わせ場所に向かう途中
俺は詩織に最後の確認をした。
最後の確認でも、詩織は嫌とは言ってくれず
俺は絶望した。

俺は、本気でやらせるつもりもないのに、
迂闊にも詩織に援助交際を勧めたことと
その後、やけになって援助交際の段取りを整えてしまったことを悔やみ、
自分の馬鹿さ加減を心底、悔やんだ。

しかしこのときになってもまだ、俺はただ悔やむのみで
ご主人様の特権を利用して強制的に止めさせたりはできなかった。
詩織自身が乗り気なのに、俺が「男が一度言ったこと」を引っ込めるのは
どうしてもプライドが許さなかった。

もうすぐ待ち合わせ場所に着き、相手の男がそこに現れるという段階になっても
俺は、自分のプライドを捨てられなかった。

約束の時間の5分前ぐらいに、待ち合わせ場所に着いた。
俺は、自分の携帯を詩織に渡し
詩織から5メートルぐらい離れた場所に座り
待ち合わせ中の人に紛れて詩織の様子を見ていた。

詩織が俺の携帯を使って何度かメール交換をした後
援助交際男が詩織の前に現れた。

ラグビーでもやってそうな大柄な体格で、
髪は短髪で前を上げており
いかにも日焼けサロンで焼いたような
コンガリむらなく日焼けした男だった。

紺色のハーフコートに茶色のコーデュロイのパンツを履き
大きな犬の描かれた無駄に高そうな趣味の悪いセーターを着ており
当時、中年男性の代名詞でもあったセカンドバックを持っていた。

交渉の様子をしばらく見ていたが
男が一方的に話しかけるのみだった。
詩織は下を向いたきりで、
泣きそうな顔のまま一度も口を開かなかった。

詩織には、交渉は無理そうだ。
ただでさえ人見知りが激しい上に、詩織はかなり緊張している様子だ。
詩織に交渉を任せたのでは、こちら側の要望を相手に伝えられないどころか
男の押しに負けて、そのまま二人だけでどこかへ消えてしまう心配もある。
俺はそう思った。

仕方がないので、俺の方から援助交際男の方に近づき
男に話しかけた。

「どうも。秀樹さんですよね?」

振り返って俺を見て、男の顔が急に強張った。

「…君は?」

「はじめまして。まさきって言います。
こいつの彼氏です」

男は明らかに怯んでいた。
頬がヒクヒク動いていた。

肌の張りや顔の皺から見て、
やはり32歳というのは嘘だと思った。
若くても30代後半、下手すれば40代かもしれない。

「あ、勘違いしないでください。
美人局とか、そういうんじゃないんで。
もし美人局なら、ホテルに入る直前に声掛けますよ
今このタイミングで声は掛けないでしょう?」

男が安堵の表情になった。

「………君一人だけ?」

周囲を入念に見回した後、秀樹と名乗る男が尋ねた。

「はい。こいつと俺の二人だけです」

俺は詩織の頭にポンと手を乗せ、男にそう言った。

「一応弁解はしておくけど、誘ったのは僕からじゃないよ」

男の話し方は、穏やかで丁寧だった。
事務職と言っていたが、本当は営業職なのかもしれない。

「はい。知ってますよ。
掲示板に書き込んだのは俺ですから」

「…………話が見えないな。で、君はどうしたいんだい?」

「簡単です。
秀樹さんは、これからこいつとサポると思うんですが
そのとき、俺に見学させてほしいんです。
こいつ、俺が言うのもなんだけど
イチゴーじゃ安いと思います。
実は、安いのには理由があって、
彼氏の見学っていうオプションが付いてるからなんです」

男は、俺の話を聞いて大笑いした。

「いやあ。驚いたよ。
君たち、若いのに、中年カップルみたいなことするんだねー」

「お願い聞いてもらえますか?」

「ああ、僕はいいよ。
ただし、最初に言っておくけど、追加料金は払わないからね」

「構いませんが、一つだけ。
生でしたり、アナルセックスしたりすれば
追加で料金いただきます」

「それは構わない。
でも、僕はそんなことはしないから安心していいよ」

「じゃあ、交渉成立ですね」

「よし。じゃあ、早速行こうか。
いいホテル知ってるんだ」

秀樹と名乗る男は、そう言って歩き始めた。
ホテル向かうまで、男は、詩織よりも俺に対して気を使っていた。

「君の彼女、かわいいねえ」とか
「付き合ってどれぐらいなの?」とか
中年とは思えないような異常なハイテンションで
俺に話しかけてきた。

詩織は、俯いて無言のまま
俺たちの後をついて来た。

俺たちは途中コンビニに寄って、飲み物などを買ってから
改めてホテルへと向かった。
俺も詩織も食欲がなかったので、コンビニで食べ物は買わなかった。

秀樹という男が選んだのは、休憩時間が3時間のホテルだった。
値段は、かなりお安い。
この男が言うには、ここは安い上に複数プレイもOKで
この街で3Pするときには、いつもここを利用しているらしい。

確かに、複数人で遊ぶのもOKで、値段もかなり安く
休日の休憩時間が3時間なら、
秀樹の言うようにいいホテルには違いない。

だが俺は、3時間という長い休憩時間に
自分が耐えられるかが気になった。
周囲には休憩時間が2時間のホテルもあり
そういったホテルの方が俺としてはよかった。

しかし、代替案を提案しようにも
3人一緒に入れて、休憩が2時間のホテルなど
当時まだ高校生で、3Pの経験などない俺には心当たりがない。
結局、秀樹の後を追ってホテルに入るしかなかった。

詩織は、ホテル入り口で俯き、思いつめたような顔をして立ち止まった。
しかし、俺が「無理なら止めよう」と言うために詩織に近づこうとしたとき
詩織は、意を決したようにホテルに入ってきてしまった。

秀樹の選んだ部屋は、バスルームがガラス張りということもなく
壁の間接照明など洒落たものもなく
三角木馬などのSMグッズもなく
ただ、大きな四角いベッドと簡易のソファとガラステーブル
それにテレビやゲーム機などがあるだけの、
至って殺風景なラブホテルだった。
まさに、性行為をするためだけの空間だった。

大きなベッドを見て、
あのベッドの上で、これから詩織が中年男に犯されるのかと思うと
少し吐き気がした。

秀樹はハイテンションで俺に話しかけてくるが
俺は、笑顔でそれに合わせるのが苦痛で仕方がなかった。

秀樹は詩織にも話しかけ、退屈させないように気を使っていたが
ただでさえ人見知りの激しい上に、かなり緊張している様子の詩織は、
首を縦に振るか横に振るかしかせず、声も出さなかった。

「大人しいねえ、君の彼女。
もしかして緊張してるのかな?」

秀樹は、上機嫌で俺に言った。

ホテルの一室に入った詩織は、
ベッドには座らず、ベッドの足元付近にあったソファに座った。

俺も、傍観者に過ぎない俺がベッドには座るのは気が引けて
詩織の真正面のソファに座った。

ソファに座る詩織は、悲しそうな顔をして俯いており
暗い顔の中にもハッキリと緊張の色が見て取れた。

3時間という長い時間を少しでも潰すため
俺は詩織にシャワーを浴びるように言った。

「あ、シャワーは浴びないでほしいな。
僕は若い子のツーンとくる匂いが好きだからね」

秀樹と名乗る男は、一人ベッドの縁に座ってそう言った。

「あ、そうなんですか。
変わった趣味ですね」

三人の中でただ一人ハイテンションの秀樹は、そこでまた語り始めた。
何でも、10代の女と20代の女、30代の女、40代の女は
体臭も、局部の匂いも、それぞれ全て違うらしい。
そしてこの男は、とりわけ10代の女の匂いに興奮を感じるとのことだった。

これは、同年代としか経験のない俺には分からなかったことで
少しだけ、この秀樹という男に感心した。

同時に、詩織の甘い全身の匂いや、淫靡な詩織の愛液の匂いを、
これからこの中年男に嗅ぎまくられるのかと思うと
一層胸が苦しくなった。

「あ、でも、秀樹さんはやる前にシャワー浴びてくださいよ。
なつみは体臭とかダメですから」

少しでも時間を潰すため、
俺はシャワーを浴びるよう秀樹に言った。

「ああ、じゃあそうするよ」

そう言って男は、シャワールームへと消えていった。

男がシャワーを浴び、
これでまた一つ、中年オヤジによる詩織の陵辱に近づいた。
刻一刻と近づく寝取られの瞬間に
俺は、吐き気がするほど気が滅入っていた。

しかし俺は、なんとか気を奮い立たせ
当初の計画通り行動した。

シャワーの水の音が聞こえ始めるのを合図に
俺は、ハンガーに掛けた秀樹のコートから
秀樹の携帯を取り出してロックの有無を確認した。
愚かなことに、秀樹はロックをかけていなかった。

俺は、デジカメのフラッシュをオフにして
秀樹の携帯プロフィール
それから着信履歴、発信履歴の中で数の多いものを
次々にデジカメで撮影した。

来る前に自宅で色々試したが、
携帯から必要な番号だけを短時間で抜き取るには
連写のきくデジカメでの撮影が一番早かった。

秀樹の携帯は、着信、発信ともに「自宅」と「美佐子」が群を抜いて多かった。
電話を掛ける頻度と時間からして、この男は既婚者であり、
美佐子というのは彼の奥さんの名前で、まず間違いないだろうと思った。

「会社」の登録はなかったが
あ行から順に見ていくと
「浅野部長」という会社関係者と思しき登録があったので
それも撮影した。

当初の目標であった会社関連の情報と自宅の情報は押さえたので
秀樹に気付かれないうちに携帯を元に戻した。
情報収集の総工程は1分にも満たなかったと思う。

別に、入手した情報を脅しなどに使うつもりはなかった。
争い事や厄介事は嫌いだし
犯罪まがいのことをしてまで、金がほしいわけじゃない。

これは、秀樹という男が、将来不測の行動をとったときの保険だ。
この男が、詩織に再三迫るなどの困った行動をしたとき
警察に通報すれば、俺や詩織も傷を負いかねない。

俺たちが無傷のまま、この男にこちらの言い分を飲ませるためには
この男の自宅や仕事先など、いくつかの情報を押さえることが必要になる。
これは、そのための情報収集だった。

15分ほどすると、秀樹がバスルームから
バスタオルを腰に巻いただけの格好で出てきた。
やはり32歳には思えない。
腕や首周りは太いが、腹にはかなりたるみがあり
肌に色艶がない。
胸板には厚みがあるものの、筋肉質な厚みではなく
胸板にもたるみがあった。

「いよいよか……」

心の中で、俺はそう思った。
これから詩織を犯す男が服を脱ぎ、醜い裸を晒すのを見て、
俺は、ジェットコースターが動き出す直前のような
浮き足立ったような嫌な気分になり、
息苦しさのような胸の苦しみはより酷くなった。

寝取られ属性という言葉がある。
確かに俺も、詩織や元彼女が他の男に犯される妄想をすると
不自然な興奮を得られる。

しかし、現実に寝取られる場面に立ち会わされると
絶望と息苦しさで胸がいっぱいになり
不自然な興奮などは残っていなかった。

俺にとっての寝取られ属性とは
女性のレイプ妄想と同じようなものでしかなかった。

レイプされる心配のない安全な状況で
女性がレイプ妄想を楽しむように
俺もまた、寝取られる可能性がほとんどない状況でなければ
寝取られ妄想を楽しむことができない性質だった。
現実の寝取られ場面は、ただ苦しいだけだ。

「じゃあ、早速始めていいかな?」

シャワーを浴び終え、バスタオル一枚の秀樹は
興奮しているのか、一層テンションを上げた声で俺に尋ねた。

「あ、はい。お願いします。
後は俺、空気になってますんで」

必死に笑顔を作って、秀樹の問いかけに応じた。
空気になると言ったのは、
これ以上、秀樹の会話に付き合うだけの気力がなかったからだ。
もう話しかけないでくれ。
暗に俺は、秀樹にそう言った。

「じゃあ、なるべく君から
彼女のエロいところが見えるようにやるから」

気持ち悪い笑顔で俺に笑いかけ
使ってくれなくてもいい気を使い
秀樹は更に俺を苦悩させた。

「なつみちゃん、そろそろ始めようか」

俺の前に俯いて座っていた詩織は、
秀樹に仮の名前を呼ば、ビクッと顔を上げた。

詩織の顔色は、貧血を起こす直前の人間のように真っ青で、
変な汗をかき、顔は引きつっていた。

「こっち来て、ここ座って」

ベッドの縁に座る秀樹は、
ベッドの自分の座る真横をポンポンと叩いて
詩織を招いた。

詩織は、一言も口をきかず、
誘われるままにフラフラと秀樹の方へと歩いていき
秀樹の真横ではなく、秀樹から50センチほど離れたベッドの縁に座った。

秀樹はすっと詩織に近づき、詩織の真横に座りなおし
詩織との距離をぴったりと詰めた。

「じゃ、いくよ」

興奮した面持ちの秀樹は、俺にそう一言断って
詩織の唇に吸い付いた。

ついに始まってしまった。

怯える詩織の唇を奪った秀樹を、
殴ってやろうかとも思った。

だが、秀樹は俺の依頼を受けて、
俺の目の前で詩織を犯そうとしてるわけだし
秀樹には、殴られるような非は一点もない。
俺が暴力を振るっていい道理など、全くなかった。

俺は、絡み合う二人を直視することができなかった。
かといって、完全に目を背けると
今度は詩織が今、俺の横で何をされているのか気になって仕方なくなる。

結局、俺は、公園や電車内でイチャ付くカップルを見る中年男性のように
チラチラと横目で二人を見ることになった。

はっきり見ることはできなかったが、
突然、初対面の男に唇を奪われた詩織は、
顔を横に背け、秀樹の唇から自分の唇を離しているようだった。

秀樹は、キスを避ける詩織の両頬を両手で押さえ込み
詩織が逃れられないように顔を固定し、
もう一度、強引に詩織の唇を奪った、

浅黒い肌のチャラついた中年の大男が
華奢で色白の大人しい少女を捕らえ、強引に唇を奪う様は
目を背けたくなるほど残酷な光景だった。

詩織と並んでベッドの縁に座る秀樹は
しばらくそのまま詩織の唇を貪り続けた。

長いキスの後、秀樹は詩織の唇に吸い付いたまま
詩織を押し倒し、詩織と一緒にをベッドに倒れ込んだ。

秀樹は、最初に詩織の服を一枚一枚脱がしたりなどせず
詩織の唇に吸い付いたまま、
仰向けにベッドに押し倒された詩織の上に覆いかぶさり
いきなり、まだ膨らみかけの詩織の胸を服の上から強めに揉んだ。

秀樹という男は、
歳の割には、せっかちな責め方をするようだった。
まるで中学時代の俺のようだ。

俺と、前の彼氏にしか触らせたことのない詩織の胸の膨らみが
花に例えるなら、まだ開きかけの蕾と言っていい少女の乳房が
中年男の大きく太い指によって、陵辱されてしまった。
俺の息苦しさは一層強くなっていった。

「…いやあ…」

秀樹が詩織の胸を触り始めてから数秒後
詩織が蚊の泣くような小さな声を出し、
覆いかぶさる秀樹を、両手で押しのけようとした。

当然、詩織の細い腕では
ラグビー選手のような大男を押しのけるられるわけもなく
詩織の腕は、ただ大男の胸板と詩織の体の間に入り込んだだけだ。

だが、ようやく詩織が拒絶の言葉を口にしてくれた。
助かったと思った。

体はすっかり俺に開発されてしまったが
心にはまだ、俺に調教される前の清純な詩織が残っていてくれた。
それが、この土壇場になって、少しだけ顔を出してくれた。

待ち望んでいた一言を聞いた俺は
ソファから立ち上がって、秀樹に声を掛けた

「すいません。
やっぱり、そいつ無理みたいです。
こちらから呼び出しておいて申し訳ないんですが
中止してもらえませんか?」

「…ん?…ああ。
僕も、いつ言おうかと思ってたんだよ。
君ぐらいの若い子には分からないかもしれないけど、
僕ぐらいの年になるとね、ムードがないと立たなくなるんだよね。
情けない話だけど」

詩織に圧し掛かる小麦色の大きな体を起こし、
ベッドの端に座り直しながら、秀樹はそう言った。

秀樹の物言いは、若い頃に泣いて嫌がる女を
強姦した経験があるような言い方だと思った。

さっきまで自分を襲っていた大男が圧し掛かるのを止めると
詩織はパッと上体を起こし、
ベッドの縁に座る秀樹から逃げるようにベッドの中央に行き
正座から尻だけをベッドに落としたような座り方で座った。

二人の絡み合いが終わり、
ようやく俺は、詩織を直視することができた。
改めて詩織をしっかりと見て、
秀樹の言っている意味が分かった。

ベッドの上の正座から尻だけを床に落としたように座る詩織は
真っ青な顔で、涙をポロポロこぼし、
太ももの上に置かれた手は、ガタガタと震えていた。

たしかに、S気のない人なら、泣きながら震える女を見たら
性欲を一気に失ってしまうのかもしれない。
Sの俺からすれば、そんな女は、初々しくてたまらない獲物なのだが。

詩織の顔を見ると、少し前から泣いていたようだ。
だが俺は、中年男に奪われる詩織の唇を直視できず
詩織の表情をほとんど見ることができなかった。

奪われる詩織の唇をしっかり正視できるぐらい
俺がしっかりしていれば、
あと少しだけ早く止められたのに
と俺は自分の不甲斐なさを悔やんだ。

「ごめんね。恐かった?」

震える詩織に向かってそう言うと、
秀樹はベッドを離れ、俺の向かいのソファに座り、煙草を吸い始めた。

「まあ、君が止めてくれてよかったよ。
もし、君が止めなかったら、
僕は君を殴ってたかもしれないな」

小麦色に焼けたチャラ付いた中年男は
俺の向かいのソファで煙草を吸いながら、真顔で俺にそう言った。
丁寧な口調とは裏腹に、目つきは鋭かった。

中年とはいえ、浅黒い肌の大柄な男に睨まれて、俺は少しあせった。

その後、秀樹はテキパキと服を着ながら、
俺への説教を続けた。

恋愛ってのは、お互いを思いやる心が大事だとか
自分の欲望だけで彼女を傷つけるなとか
ありきたりの恋愛論を、秀樹は語った。

年齢的に当然なのかもしれないが、
秀樹の説教は上から目線だった。

やはり営業系なのだろうか。
それとも社会人としての会話が板についているのだろうか。
上から目線であるにもかかわらず、
決して俺を酷く不快にするような言い回しは選ばず、
角を立てない巧みな言い回しで、秀樹は俺に説教を続けた。

こういう、相手を不快にしない言い回しを選び続けられるやつは、
当時、高校生だった俺の周りにはいなかった。
その点は、この男に感心した。

俺は、黙って秀樹の話を聞いていた。
まさか、既婚者でありながら援助交際をするような男に
男女の愛情について説教されるとは、思わなかった。

「料金だけど、キスと軽く胸タッチしかしてないから
千円でいいかな?」

「あ、お金は結構です。
結局、お時間とらせてしまっただけですから。
ホテル代も俺が持ちます」

秀樹の料金支払いの申し出を、俺は拒否した。
たとえ唇と、服の上からの胸への愛撫だけにせよ、
詩織の体を金で売ったという事実は、絶対残したくなかった。

「そうか。
じゃあ、料金とは別に、この金で君に依頼したいことがあるんだ。
もうなつみちゃんに、こんな真似させないでくれないかな。
これは援交の料金じゃなくて、僕からの依頼の料金だ」

そう言って秀樹は、5千円札を俺に差し出した。

「分かりました。
もう二度とさせません」

そう言って俺は、秀樹から5千円を受け取った。
これで、ホテル代は十分賄える。
赤字はない。
無意識のうちに俺は、今回の援助交際の損得勘定をしながら金を受け取った。

詩織を大事にするようにもう一度言って
秀樹は先にホテルの部屋から出て行った。

秀樹がいなくなった頃には、詩織も泣き止んでいた。

俺と詩織の二人だけになると
ホテルの部屋は急に静かになり
秀樹がかけた有線放送の音楽だけが流れていた。

詩織は、相変わらずベッドの上で
正座から尻だけを落としたような座り方で座り、
俯いて下を向いたままだった。

悲しそうな顔で俯く詩織を見ていたら、たまらない気持ちになり
俺もベッドの上の登り、詩織の正面に座った。

「………ごめんなさい……」

相変わらず俯いたまま、悲しそうな顔で
詩織は俺に謝った。

詩織を傷つけ、ここまで追い込んだ本人である俺に
謝罪する詩織があまりにも哀れで、見ていて悲しくなり
俺は、思わず詩織を抱きしめ、そのままベッドに押し倒してしまった。

ベッドに倒れこんだ俺はベッドに右肩を付け
押し倒された詩織は、ベッドに左肩をつけた。
俺たちは向き合う形でベッドに倒れこんだ。
詩織は、俺の胸に顔を埋め
俺は、詩織の頭を胸に抱え、詩織の背中を抱きしめた。

「…何で謝るんだよ……よくやった…」

声が詰まって言葉が出なかったが
ようやくその一言だけ、俺は詩織に言うことができた。

詩織が援助交際を拒否してくれた喜びや
詩織に対する哀れみ、詩織に対する申し訳なさ
苦悩から抜け出た安堵感など
色々な気持ちで胸がいっぱいになり
感極まった俺は、不覚にも、詩織を抱きしめながら涙を流してしまった。

詩織にばれないように涙を処理しようとしたが
俺の言葉を聞いて、俺の胸の中で顔を上げた詩織に、
泣いているところを見られてしまった。

俺が泣いているのを見て、詩織もまた
俺の胸の中で泣き出した。

俺が僅かに涙をこぼすだけだったのに対して
詩織のそれは、声を上げての大号泣だった。

ずいぶん遠回りしたけど、ようやくいつもの慰めの手順に戻った。
いつもの通り、俺は詩織の頭を撫でたり、詩織の背中を擦ったり
キスしたりして、号泣する詩織を慰めた。

「…私……汚いよ?…メス犬だよ?…
……誰かに……慰めてもらう……資格なんて……ない女…だよ?…」

嗚咽しながら、途切れ途切れに詩織が言った。

詩織の言葉を聞いて、詩織の望みがはっきり分かる。
詩織は、誰かに慰めてもらいたかったんだろう。

たとえ自分を追い詰めた本人であっても
慰めの言葉を掛けてもらい、
メス犬ではないと言ってほしかったんだろう。

俺は、思わず貰い泣きしてしまった。
だけど、詩織はずっと俺の胸に顔をつけて泣いていたので
今度は、気づかれなかったと思う。

詩織の苦しい心情を思うと、俺も胸が苦しくなった。
久しぶりに、人間らしい気持ちが返って来た気がした。

いつもなら、鬱陶しく感じるこの慰めの作業だが
そのときは全く苦ではなかった。

俺の胸で泣く詩織に
なぜ最後になって、泣いて嫌がったのかと聞いたら

「…あの…やっぱり無理だって…思って…
…でも…今更…気付いても…もう遅いと…思ったら…
…悲しくなって…」

と嗚咽交じりに、いつものように途切れ途切れに詩織は答えた。

俺は、おそらく、それこそが詩織の本当の気持ちで
援助交際したいというのは、単に詩織が捨て鉢になっているだけだということ
本心では、援助交際をしたいとは思っていないのだから
自分の本当の気持ちを大事にして、二度とこんなことをしないでほしいと
詩織に言った。

「…うん…もう…しない………ごめんなさい…」

と詩織は答え、また激しく泣き出した。

それから、誰に触られても反応するのは、
単に詩織の体が大人の女性の体になっただけのことだから
それがメス犬の証拠になるなら、成人女性のほとんどがメス犬だということ。

くすぐられたら、誰にくすぐられたって笑うし
叩かれたら、誰に叩かれたって痛いものだし
大人の女性の体とはそういうもので
それは単なる生理反応だから気にするなということ。

本当のメス犬は、誰に触られても反応する女ではなく
誰とでも簡単に寝ようとする女のことであり
体の成熟度合いの問題ではなく、
心の置き方の問題だということを
詩織に言った。

こんな話をした後、俺は

「メス犬って言っちゃったのは、悪かったよ。
あれからずっと、謝りたかったんだ。
取り消すし、謝る。
ごめん。
だからさ、もう自分をメス犬だなんて思わないでくれよ。
少なくとも俺は、お前がメス犬だなんて思ってないから」

と言った。
ようやく俺は、失言を取り消し、詩織に謝ることができた。
詩織は

「……うん………ありがとう…」

と嗚咽しながら言った。

冷静に考えてみれば
俺が失言を取り消して謝罪しただけのことで
俺は礼を言われるようなことは何一つしていない。
しかしなぜか、このとき詩織は、俺に礼を言った。

詩織には、俺の過ちを忘れて、俺の功績だけを見る傾向が強いが
詩織のこの傾向の意味が分かるのは、もう少し先のことだ。

慰めている最中、俺が詩織の唇に軽くキスしたら、詩織は

「…私の口…汚いよ?……」

と言った。

俺は、汚いと思うなら詩織にキスなんてしないと言って
詩織にもう一度キスし、詩織の口内の至る所に舌を這わせた。

犬が自分のテリトリーに小便でマーキングするように
俺は、中年男に奪われた詩織の唇に
入念に自分のテリトリーである証拠を残そうとした。

俺は

「これからは、俺と将来の彼氏以外とは、絶対セックスしないって
約束してくれないか?
これは命令じゃない。約束だ。
だから、奴隷契約が終わっても有効だ。
俺との奴隷契約が終わっても、絶対自分を大安売りしないで
ずっと自分を大事にし続けるって
俺と約束してくれよ」

と言って、詩織に小指を差し出した。

相変わらずボロボロ泣く詩織は
俺に小指を絡め、指切りをした後

「……ありがとう…」

と涙声で言い、俺の胸に顔を付け
また声を出して泣き始めた。

そのまま、ずいぶん長い時間、詩織を抱いたり
頭を撫でたりしていた。

詩織は、長いこと泣いていたが、
少しずつ落ち着いていき
やがて泣き止んだ。

詩織が泣き止んだ後、俺たちはしばらく無言だった。
俺は、詩織に腕枕をし、詩織の後ろ髪を撫でたり、
背中をさすったりしていた。

お互い無言で有線放送の音楽が流れる中
詩織は、俺の胸の中にあった顔を上げ、
俺の顔を見上げて

「…私のこと……軽蔑しない?…」

と聞いた。

「しないよ」

俺は即答した。

詩織は、しばらく考え込んだ後

「…本当に……軽蔑……しない?……」

ともう一度俺に尋ねた。

「しないって。
俺は嘘付かないよ」

また俺は即答した。
詩織はまた、しばらく無言だったが、

「…………ついた…」

とポツリと言った。

「え?」

「……嘘……ついた………この前……」

「え?…
ああ。だからあれは、そういうプレイなんだよ。
プレイ以外では嘘付かないし、
プレイ中でも詩織の安全に関わることなんかでは嘘付かない」

嘘だけは絶対付かないという当初の予定を
欲望と悪戯心で狂わせてしまい
俺は少し対処に困った。

「軽蔑しないどころか、むしろ詩織を尊敬してるよ」

そう言って、俺は詩織の頭を撫でた。

「俺が嘘を付くか」という話から、論点をずらしてかわしたわけだが
詩織は俺の意図に気付かなかった。

「…あの………こんな女………どこが…尊敬できるの…」

沈んだ声で詩織は尋ねた。

説得力を持たせるため、俺は、具体的な例を挙げながら説明した。
優しいところ、俺だけではなく周囲の人間のほとんどを立てるところ
意外に芯が強いところ、包容力のあるところ
綺麗なのにそれを鼻にかけてないところ
我慢強いところ、他人のせいにせず反省できるところ
とにかく思いつく限り、詩織の良いところを挙げて
詩織を褒めちぎった。

感じやすい体も、男にとっては大きな魅力だということも
詩織に言った。

こんなことになったから、俺には詩織と付き合う資格なんてないけど
もし違った関係だったら、俺は詩織に告白している
とも言った。

慰めてるというより、口説いているようだった。
幸い、どちらかというと、
慰めるよりは口説く方が気楽な性質だ。

相手を慰めるという作業は、
相手の悩みや苦悩を聞きながら、相手を考え方や気持ちを理解し
相手の心の結び目を見つけ、
それをほどくための言葉を探すことを必要とする

適当に話を聞いた後、自分なりの人生観を話すだけの
やっつけ仕事的な慰め方ならともかく
真面目に慰めようと思うと、結構な頭脳労働だと、俺は思う。

相手の話を聞いている最中に気が抜けないし、
ときには話に耳を傾けながら、
相手の生い立ちや生活環境にも想像を膨らませなければならないので
俺の場合、慰め終えた後はぐったりすることも多い。

しかし口説くのは、
自分の熱意や自分の気持ちを伝えるだけでもなんとなかなる、
相手の心情を理解した上で自分の気持ちを伝えるに越したことはないが
どうしても相手の話をしっかり聞き、相手の心理分析をしなくてはならない、
というものではない。

疲れていて頭が回らないときでも、
適当に耳障りのいいことさえ言えれば、なんとかなることも間々ある。
浮いた言葉を口に出す少しの勇気さえあれば、それでいいだけの作業だ。

俺は長々と詩織の良いところを語り続け
詩織は、それを黙って聞いていた。

俺の話の途中、詩織は、また泣き出してしまった。
詩織が泣き始めても、俺は詩織を褒め続けた。

俺の長い演説が終わり
泣き止んだ詩織の頭をしばらく撫でていたら
詩織は、ゆっくりと顔を上げて、
俺に顔を近づけ、俺の頬にキスをした。

命令もなく詩織から俺にキスするなんて、
初めてのことだった。
俺が驚いていると

「……あの……今日の………お礼…」

と耳まで真っ赤にして、消えそうな声で詩織は言った。
言った後、俺の肩の辺りに顔を埋め
真っ赤になった顔を隠した。

「お礼?
ああ。今日トイレでやった一発のお礼か?」

何のお礼なのか分かってはいたが、
照れ隠しに、俺はそんなことを言った。

詩織は、顔を隠しまま
甘えるように俺の胸を軽く叩いて抗議した。

「……あの………そうじゃ…ないから……」

顔を埋めて隠したまま、詩織は言った。

「何のお礼?」

「…今日…おじさん止めてくれた…
………それから…慰めてくれた……
…私のこと……本気で…心配してくれた…
……あと…私のために…泣いてくれた…
……その…お礼…」

やはり詩織に泣き顔を見られていた。
俺は、女を口説くような、浮いた言葉は簡単に口から出るのだが
熱い友情ごっこや、人前で泣くというのは、かなりの苦手だ。
そんなことを自分がしていることを考えるだけで
顔が熱くなる。

俺の父は規律正しい職業の家系だ。
結局、父は祖父に反発し、その職業には就かなかったものの
人前で涙を流さないよう
軍人・自衛官であった祖父や曽祖父から厳しく躾けられている。

そんな父なので、小さい頃、
欲しい玩具を買ってもらえず、俺が玩具屋で泣いたとき
父がまず最初に言うのは「わがままを言うんじゃない」ではなく
「男が人前で泣くな。みっともない」だった。

俺が人前で泣くのが苦手なのは、
たぶん、父や祖父の影響を受けているんだと思う。

詩織の口から、俺が泣いたことをはっきりと言われて
俺は、顔が赤くなるのが、自分でも分かった。

キスをした詩織に続いて、今度はキスをされた俺が赤くなった。
まるでファーストキスをする中学生のカップルのようだった。

とっさに顔を詩織から背けたが、
詩織に腕枕をした不自由な状態では、完全に顔を隠しきれず
赤くなった顔を詩織に見られたと思う。

赤面する俺を見た詩織は、俺の肩の辺りに顔を埋めて表情を隠し、
俺に気付かれないようクスクス笑った。

腕枕の至近距離にいて、詩織の体の動きが俺の腕や肩にも伝わるので、
詩織が笑っているのは俺にもバレバレだった。

もしかしたら、詩織は
性欲の権化のような俺が、
頬にキスされただけで赤くなったのが
面白かったのかもしれない。

しかし、笑った理由を突っ込んで聞く勇気は、
俺にはなかった。
これ以上、俺が泣いたことを蒸し返されるのは御免だった。

詩織から自発的にキスをされ、
そんな詩織を可愛いと感じる一方
俺は、自分からキスをした詩織の心理が気になった。

詩織が俺に好意を持っているということは
まずありえない。

では何故、好きでもない男になぜキスをしたのか。
もしかしたら、簡単に「体でお礼」をする女になってしまったではないか。
そんな心配をした俺は
「そうやって簡単に体で礼をするな」
と詩織に言おうかとも思った。

しかし、もしかしたら、
すでに数え切れないほど、俺の肉棒へのキスを強要されている詩織にとって
頬へのキスなどは、物の数にも入らない行為であり
詩織本人としては、「体でお礼をした」という自覚がないだけかもしれない。

それとも詩織は、最も詩織を慰める資格のない
全ての元凶である俺からの慰めの言葉でさえ
思わずキスしてしまうほど嬉しかったのだろうか。

引っ込み思案で臆病な詩織が、慰めの言葉を貰って
思わずキスしてしまったのだとしたら
詩織は相当、慰めの言葉に飢えていることになる。
さながら、コップ一杯の水を貰い、歓喜の涙を流す
砂漠の放浪者のようである。

あれこれ考え、悩んだ末、
結局、俺は、詩織に聞いてみることにした。

「おまえさ、なんでお礼がキスなんだ?」

「…あの…前…佐藤君が…言ったから…」

「え?」

「……覚えて…ないんだ…」

「あ、いや…」

どうやらキスしたのは、
昔、俺が言った言葉が原因だったようだ。

詩織の話によれば、俺は昔、
ベッドの上で詩織を慰めるているときに、詩織から礼を言われ、
「本気で感謝してるならキスしてくれ」と言ったことがあったようだ。

キスを求められて詩織が躊躇していると、俺は更に
「本当に感謝したときだけでいいぞ」と言い
詩織の頭を撫でたとのことだ。
そのときはそのまま
詩織のキスなどせずに終わったらしい。

その言葉を詩織は憶えていて
今回、感謝の印としてキスをしたというのだ。

俺はと言うと、そんな記憶は全くなかった。
きっと、考え事の片手間で慰めていて、記憶に残ってないんだと思う。

特に深い意味などなくて拍子抜けしたが
正面から聞いたのは失敗だった。

俺は、慌てて話題を変え「本気で心配してくれた」とは、どういうことか
俺はいつも本気で詩織を心配していると詩織に尋ねた。
詩織としては、命令ではなく約束をしたことを指して言ったとのことだ。

詩織とは何度か指切りをしているが
確かに、奴隷契約の契約期間終了後にまで及ぶ約束をしたのは
そのときが初めてだったかもしれない。

またしばらく俺たちは無言になり、
俺が詩織の髪を撫でていると、詩織は

「…あの……」

と俺に呼びかけた。

しばらく待っても詩織は言葉を続けなかったので、俺は

「なんだよ。
言ってみろよ」

と詩織を促した。

「…あの…信じてもらえない…かもしれないけど…
…佐藤君に…目隠しされたとき…
…私ね………本当に……気持ちよく…なかったよ……」

と詩織は言った。

「ああ。信じるよ」

そう言って俺は、詩織を抱きしめる力を強くした。

「…本当?……本当に…信じてくれる?……」

俺の胸の中で詩織は顔を上げ、俺の顔を見上げた。

「信じるよ。
詩織が尻の下に敷いたトレーナー、
グショグショにしたとこ何度も見てるし。
あのときは、それほどじゃなかったもんな」

俺の返答を聞いた詩織は、赤くなって、
俺の胸に顔を埋め、顔を隠した。

俺が自分の感情を制御できず
思わず口に出した酷い一言のおかげで、
詩織の心に深い傷を作り、その傷を少し埋めるだけでも
これだけの時間を使ってしまった。

当たり前のことだが、傷つけるのはたった一言で一瞬であり、
それを癒すためには、沢山の言葉と長い時間が必要だ。
一言の言葉の重みというものを、改めて感じた。

ある人から、他人を非難するために指差す指先は、
実は自分に向かっているものだと
教わったことがある。

その日、俺は詩織に
一時の気分で自暴自棄にならないよう言った。
しかし、俺が自暴自棄になって援助交際の段取りなどしなければ
そもそも、こんな事件など起こらなかったはずだ。

「自暴自棄になるな」という言葉は、
詩織ではなく、俺が言われるべき言葉だと思った。

一件落着し、落ち着いて考えられるようになってから俺は、
遅ればせながら、ようやく反省ができた。

詩織を慰めていたら、いつの間にか
チェックアウトの時間になってしまった。
2時間半近く、俺は詩織を慰めていた。

心の重しが消えた俺は、かなりの空腹感を感じていたので
詩織に食事をするよう提案した。
詩織もまた、心の重しが消えたようで
お腹がペコペコとのことだった。

俺は、何か食べようと言ったが
詩織は、空腹だが、今食べると夕飯が入らなくなるから
俺の食事には付き合うけど、自分は食べないと言った。

俺は、とりあえず料理は注文して
夕飯が食べられる程度に少しだけ食べて、
残りは俺にくれるように言ったら
詩織は了承してくれた。

何を食べたいのか詩織に聞いたら
「何でもいい」と、詩織らしく何の自己主張もなかった。
俺は、本当はハンバーグや牛丼など腹に溜まるものがよかったが
無難なところでスパゲティを選んだ。

俺たちはスパゲティを二皿とスープ一皿を注文し
取り皿をもらい、それぞれを少しずつ食べた。

スパゲティを食べながら、
詩織は吉野家に行ったことがないというので
今度、連れて行く約束をした。

結局、俺がほとんど食べたので
料理の代金は俺が払った。

帰り道、またいつものように
詩織を自宅の近くまで送っていた。

「おやすみなさい」

そう言って詩織は自宅の門をくぐって行った。

前回は涙声で別れの挨拶をした詩織だったが
その日、詩織はいつものように
穏やかな口調で別れの挨拶をした。