酒が入るにつれ、二人はますます久仁子さんの話に集中し、
佐々木「彼女俺に抱かせてくれよ」
私「無理だろ、彼女プライド高いからそう簡単には無理だ」
そうこうしている間に久仁子さんがやってきて
久仁子「何で佐々木さんがいるの?」
と少しビックリした様子を見せたが、彼女の想定内の出来事であったようで静かに席に着き3人での会話が始まった。

流石、営業の佐々木氏の話術に私は徐々にはまってしまい、いつの間にか自然に振る舞う久仁子さんもそこにいた。そして・・
佐々木「今夜は彼でなく私を選んでくださいよ」
酒が進んで和やかな雰囲気の中なので何を言ってもOKな感じになっていた。
そして俺もつい調子に乗ってしまい
「女はその気になれないような男には、たとえ体を触られても一生その気にならない」「ねえ久仁子さん?時々話してくれますよね」それは確かによく彼女が口にする言葉だった。
するとその言葉を待っていたかのように佐々木が久仁子さんの耳元で何か囁いた。
それを聞いた久仁子さんは佐々木を睨みつけ、それから彼女の異変は明らかだった。

悟られないように、冷静に息を整えているようにだが、何か異常な事を想像しているかのような目、半開きの口もと、それでいて自分がいい女であることを再認識させるような少し勝ち誇ったような表情もしていた。
私はその後、佐々木がトイレに行っている間に
「佐々木は何を言ったの?」
と早速聞いたのだが、その答えに私は驚愕した。佐々木は根岸社長の名前を出して、しかも
「今日根岸社長と会う予定になっているが、彼とでもその気にならない自信がある?」と言ったのだった。
まだ彼女が来てから1時間もたっていないのに話は急激に発展し、具体性までも予想される展開になってしまった。
私も興奮した。久仁子さんと根岸氏のセックスを想像してしまったからだ。

しばらくは他の話になったので、安心していたが、心の中はさっきまでの話で一杯だった。
そして、うわの空とはこんな事だなと思っていた矢先、頃合いをみたかのように佐々木氏が「どうです根岸社長では役不足ですか?ハハハ」
実は私は絶対こんな話に、彼女は本気では乗ってこないと確信していた。だが、
久仁子「少し触られるくらいの事だったら誰でも大丈夫よ・・」
「そのかわり、体を少し触らせるかわりに高い服でもプレゼントしてもらえると思っていい、佐々木さん?」

まさか直接話した事もない男に体を触られる事に承諾するなんてと思いつつ、女だったら根岸氏のような男に一度は抱かれてみたいと思うのが普通であり、危険な男だとしても、今日は知っている二人の男が傍にいるのだからという隙も、その日の久仁子さんにはあったのだと思う。

店を出て久仁子さんと私はホテルの部屋で待つ事となった。
佐々木が予定でもしていたかのように段取り良く、タクシーの運転手にホテルの名を言い先に向かうことになる。
それから味わうかもしれない修羅場を逃避する気持ちになり、私はタクシーに乗る時佐々木に「酒も忘れずに買ってきてくださいよ」と部屋で酒飲む場にするように一人話を変えようと叫んでいた。

タクシー数分で着いたのは、ワンメーターでもお釣りがくるぐらい近場にある高級感のあるホテルだった。フロントに行くと部屋は佐々木が予約してあって、結構広めのツインルームで形がくの字型で簡単なソファがあるのだが、ベッドからは見えにくい。

タクシーに乗り込んでから部屋に入るまで彼女とは一言も話せなかったが、部屋に入り現実感が増して、少し後悔している表情を察し、
「断るなら今だよね、奴らが来てしまうと、どうにもならないから・・」
久仁子「私は大丈夫よ、いつも言っているように、私も含めて女は少し触られたくらいじゃその気にならないから」

俺は「時間決めてなかったけど精々5分くらいだよね?一応久仁子さんガーターベルト上に履いておこうよ」といざという時に簡単に下着を脱がせられないよう彼女に提案した。それはその時は凄く重要な事だと思っていたに違いない。
久仁子「そうねそうするわ」と言い、少し笑顔を見せる余裕を見せてくれた。

そして彼女がトイレに入ってすぐに部屋のチャイムが鳴り、開けるとあの根岸氏が仁王立ちしていた。そしてその傍には佐々木の姿はなかった。