高校で凄いデカイ女が居た。名前はミキ
バレー部でレギュラーで身長は170cm
なんか全国のバレー関係の偉い人が見に来るくらいの選手
逆に俺は凄いチビで身長158cmしかなかった。

158cmというと大体高校生女子の平均と同じ位で本当にコンプレックスだった。
部活は陸上部だったけど身長のある奴が羨ましかった。
努力したけどいつもあと一歩及ばず・・あと10いや5センチ高ければって常に思ってた。

ミキとはクラスが同じでクラス委員の仕事でよく一緒になった。
ミキは積極的な奴で係りの仕事とかも進んでやる
だから自然に集団のリーダーになってしまう
俺は逆に地味で雑用とかをすぐ人にふられちゃうタイプ
ただ、ずるい事が嫌いだからツイツイ真面目にやってしまうから余計に任せられてしまう
クラスメイトも多分僕がそういう事を進んでやってると思ってたかも

ミキが部活で忙しい時とか良く仕事を頼まれた。
「ごめん佐藤君私先輩達に呼ばれたんだ、先生にこのプリント持って行ってくれない?」
「・・・いいけど」
こんな感じで、自分も部活があったけど正直選抜にも選ばれない補欠組何となく引き受けていた。
陸上の先輩達にもミキに頼まれて委員の仕事してたっていうと
遅れて行っても何も言われなかった。

ミキはショートヘアで
室内運動とはいっても陸上部と一緒に長距離のランニングしたりするので
バレー部の連中もかなり日焼けしてた。
スポーツに関しては男勝りだけど、一緒に委員の仕事とかしてると
意外に細やかで女の子らしい面もある
バレーでは有利だとは言っても身長が高かったり筋肉がつきすぎる事は
やっぱり少し気になるらしい
「可愛い服とかきれないんだよねw」と明るくおどけて言ってるけど
そういう事を頻繁に言うって事は内心コンプレックスなのかもしれないと思った。

ゴミ出しの時、焼却炉の前でついぼやいてしまった事があった。
「俺はもっと身長高くなりたいよ・・あと10cmあったならな・・・・」
「えーでも佐藤君は今のままの方がいいよ」
「なんでだよ・・」
身長の高いミキにそう言われてカチンときた。
「だって佐藤君の事 女子の間では可愛いって評判だよw」
ミキはフォローのつもりだったかもしれないけど
当時の僕は身長が低いとストレートに言われるより
可愛いとかそういう風に言われるのが一番傷ついた。
小学校の頃は良かったけど周りがドンドン身長が伸びていく時期から
とても嫌な言葉になっていた。
「俺は男だ!可愛いとか言われたってうれしくねーんだよ!!」
つい大声になってた、ミキに可愛いとか言われると異様に悔しく悲しく思えた。
男として見られてない自分が情けなかった。
僕はそんなに人前で怒る事はないからミキもビックリしたんだと思う
少しショックを受けてる表情のミキを置いて僕は教室にズカズカと歩いて戻った。

それから数日は凄く気まずい空気だった。
ミキも何となく悪かったなという感じで腫れ物に触るように僕に接してきた。
僕もいい過ぎたなという気持ちからミキの顔が見れなくなった。
ただ、お互い律儀にも委員の仕事だけは真面目にこなすから
どうやっても毎日顔は合わせた。

バレー部や野球部サッカー部など運動部は持久力の獲得のために
長距離のランニングを陸上部と合同で良くやった。
その日も野球部女子ソフト部女子バレー部陸上部で郊外をランニング
僕は足の速さも幅跳びもどんなに頑張っても今一だったが
持久力だけは負けたくないと思っていた。
毎日かなり走りこんでいたので部内でも結構なタイムだった。
まあ、それでも大会にはもっと上の奴が出ていたのだけど・・・
ミキと気まずくなって始めてのバレー部との合同練習
走っているとミキが後ろから追いついてきた。

「・・・・・・」

気まずいからというより部活の時は私語厳禁
お互い黙って併走する
でも何となく解ってた。
ミキは業と僕の速度に合わせているんだと
隣に感じるミキの息遣いが妙に安心感を与えてくれた。
(俺こいつの事好きなのかな・・好きだから可愛いとか言われてあんなに悔しかったのかな)
そんな事をグルグル考えている間にゴールしてしまった。

部活が終わって帰り支度していると
ミキが声をかけてきた。
「あの・・・佐藤君ちょっと待っててくれる?」
ミキらしくない少し控えめな言い方、何処かソワソワして眼が泳いでいた。
「な、なに?」
「あの、急いでたらいいんだけど・・ちょっと話したい事があるから・・」
「わかった・・」
周りに人が居たのでこれ以上ココで2人で話すのは目立ちそうだったので
ぶっきらぼうに答えて部室に荷物を取りにもどった。
解らないけどなぜか、ミキはその僕の後姿を長いこと見つめてたような気がした。

それから30分くらいバレー部の長いミーティングを待っていた。
陸上部のメンバーは殆どが帰り支度をしてさっさと帰ってしまった。
夕日も完全に沈んでしまいあたりはもう暗くなってきていた。
家の方角である学校の裏門近くのベンチに腰掛けていると
ミキとバレー部の数人が自転車を押してやってきた。
「あれ、佐藤君じゃんw」
「あー佐藤!」
「何してんの?帰らないの?」
「・・・・・」
なんと言えばいいのか迷っていると
「私が待って貰ってたんだ」
ミキがあっさり言う
「えーっまじ?!」
「あんた達付き合ってんの?」
物凄く意外そうに言うのが妙に頭にきたが黙っていた。

「違う違う・・ちょっとクラス委員の仕事の事で佐藤君に頼みたい事あったから」
「なーんだ、つまんないの」
ミキの説明にあっさり納得する・・まあ仕方がない・・バレー部のエースが
こんなチビの男を相手にするわけはナイ・・・僕が他人でもそう思っただろう

「ごめんね佐藤君まった?」
「いや・・別に・・」
でも、それでも僕は少なからずショックだった・・もしかして・・と淡い気持ちを抱いていたのがバカみたいに思えた。
また悔しい気持ちがわいてきていた。
「そっか、じゃあ私達先行くね」
「うんじゃあ明日ね!」
「ミキばいばーい」
「佐藤君もバイバーイ」
「佐藤!ミッキーに悪戯すんなよ!」

「ばっしねーよ!!」
「キャハハハ!」
笑いながら遠ざかっていくバレー部の女子の背中に大声で言う

「待たせてごめんね、ミーティング長くなっちゃって・・江川先生直ぐ話が長くなっちゃって・・」
バレー部メンバーを校門の向こうに見送った後改めてミキが言う
「まあ、気にしてないよ、江川先生話なげーからな・・」
江川先生の話の長さは校内でも有名だった。
「そうなんだよねwしかも同じ話何度もするんだもんw」
グランドを照らすライトの明かりでミキの顔がホッとしたように笑うのが見える

「まあ、真面目で生徒の事考えてくれるいい先生なんだけどねwたまに熱過ぎるんだよw」
ミキが饒舌に話す。
そういえばこういう風に長く話をするのは久しぶりに思えた。
いつも一緒に委員の仕事をしていたけど短い挨拶だけ 「うん」とか「おう」とかばかりだった。
「で、委員の仕事の事ってなに?」
「あ・・あのね・・」
「それで呼び止めたんだろ、今日中にやっておかないといけない事?」
「いや・・あの・・」
「ごめんなさい!!」
「は?」

ミキが長い体をくの字にまげて行き成り謝る
「なにが?」
「佐藤君が気にしてるのわかんないで・・あんな適当な事いって・・ごめんなさい・・」
「あ、ああ・・・」
ゴミ出しのときの事だと直ぐに思い当たる
「もう別に気にしてないよ、お前も律儀に謝らなくていいし・・」
「本当にごめんね・・私鈍いって言うか相手の気持ち解らずにポンポン適当な事言っちゃうっていうか・・本当ごめん」

「いや、俺も男らしくなかったよ・・あんな事位でイライラしてさ・・お前なりにフォローしてくれたんだろうし・・お互い様って事で気にしないで行こうぜ」
「本当?!」
「ああ、男に二言はねーよ」
この頃の僕はヤタラと男らしさを気にしていた。
だから良くこんな台詞をミキの前で言ってたように思う
「じゃあ今までどおり仲良く委員の仕事やっていこうね!!」
そういうとミキは自転車に飛び乗って
「じゃあね佐藤君!また明日!」
というなり行ってしまった。

「あ、ああ・・」
真面目なミキらしい真っ直ぐな謝罪だった。
しかしミキとまた普通に話せると思う一方
なんだ、結局ミキは委員の仕事が上手く回らないのが嫌だったのかと思えて
やっぱり悲しかった。
今にして思えばミキの精一杯の告白だったのに、この頃の僕は
どうしようもないコンプレックスの塊でそれに気がつく事が出来なかった。

翌日からミキと僕はまた普通に話すようになった。
僕はすっかりミキへの気持ちを自覚していたけれど
自分に自信が持てないばかりに只友達として側に居る事しか出来ないで居た。
告白する勇気なんて持てるはずもない
相手は学校期待のバレー部エース、方や万年味噌っかすの陸上部員
釣りあいなんて取れるわけがないと思い込んでいた。

「佐藤君って毎日練習凄い頑張ってるんだってね」
「は?」
「顧問の静岡先生言ってたよ、アイツは凄く頑張ってるって・・」
(そしてその後、アレで体格がよければなって言ったんだろうな・・)
ミキの最後の部分が微妙に尻すぼみになったのを感じてそう思った。
実際静岡先生は良く僕に言ったものだった。
「佐藤もっと飯を食え!スポーツは練習だけじゃないぞ!食うのも練習だ」と

自分でも解ってる・・これでもかなり頑張って食べてるが・・いかんとも身長は伸びない・・
どんなに頑張ってもなぜか筋肉のつきにくい人 身長が伸びない人というのは実際居るのだ
「まあ、ソレしか取り得が無いからな、練習だけだよ出来るのは」

自分らしくない弱気な台詞だった。
「そ、そんなこと無いよそれって大事な事だよ」
「まあな・・でもそれだけじゃあダメなんだよ・・」
色々やってみた、努力だって部員の誰よりもやってきたつもりだ
でもやっぱり届かない・・・やるせない気持ちになってしまう
「・・・・・・」
それが伝わったのかミキはそれ以上何も言わなかった。

大学受験を控える季節になって僕は陸上部をやめることにした。
このまま、陸上を続けても結果は出ない・・勉強に身を入れなければ・・・
両親や担任とも相談し顧問の静岡先生も引き止めなかった。
別に僕に才能がないから引き止めなかったわけじゃないと思う
僕の練習を毎日見てきた先生だからこそ、僕の決心が固い事を理解してくれたんだと思う

ミキは既に有名大学への推薦入学が決まっていた。
そこの監督さんが直々に家にやって来て両親共々説得したらしい
ミキも大学側の待遇に納得してその大学に決めたらしい

「勉強苦手だから助かっちゃったw」
放課後の教室でプリントの整理をしながら向かい合わせて雑談をしていた。
外はすっかり冬でチラチラと雪が降っていて
教室の中は生徒の人影が消えて一段を冷え込んできて
ミキはマフラーを首に巻いて話していた。

「嘘付けおまえ成績もそんなに悪くなかっただろ」
「でも、毎回大変だったんだよw」

「そういう風には見えなかったけどな・・」
「・・・さ、佐藤君は何処の大学いくの?」
「あ?俺?」
「うん何処?」
「まだ決めてないけど・・多分県外かな・・県内じゃあ卒業しても田舎じゃ就職も厳しいし」
「そっか・・」
「お前は良かったな、推薦だからこのまま卒業までバレーできるんだろ?」
「うん、来週から週1で大学生の練習に参加する事になってる」
「だから時々学校休む事になるから委員の仕事佐藤君だけに任せる事になるかも・・」
ミキはそういうと少し寂しそうにこっちを見た。
「まあ、頭悪い俺でもまだ受験まで1年以上あるし委員の仕事くらい、一人でなんとも無いよ気にするなよ」
気にしないようにと思って精一杯明るく言ったのに、ミキの顔はそれでも暗いままだった。

「でも、お前そのうちオリンピックとかでるかもな」
「ははどうかな・・うん・・でもそうなったら良いかな・・」
「今のうちにサインくれよw高く売れそうだw」
「え・・・・売るんだったらあげないよ・・・」
「冗談だってw」

「佐藤君も・・さ」
「ん?」
「陸上大学行っても続けなよ」
「まあ、走る事は嫌いじゃないからな受かって大学に陸上あったら運動不足解消にやるかもな」
「うん」

「・・・・・・・・・・・・」
急にお互い眼があって沈黙する
机を挟んで二人向き合ったまま、次に何を言うべきか迷っているようだった。

「じゃあそろそろ帰るか」
たまりかねて無難な事を言う自分・・
「うん、帰ろう・・・」
どこか寂しそうなミキ

机を片付けて職員室にプリントを置いていく
並んで歩くとミキは余計に大きく感じる
皮肉だった、遠くで見ているミキは普通の女の子なのに
そばにくればくるほどに、つりあってない気がしてならなくなる
あと10cm高ければミキと同じ170cm・・そしたら素直に告白だって出来るのに・・
つまらない男のつまらない拘りだった。

年が明けてバレンタインデーの季節
クラスの女の子がなにやら楽しげに雑誌を広げて話している姿が目立つ
「あんたも1個くらい貰ってきなさいよ」と母が冗談で言うので
そういえばバレンタインデーだったなと思い出す。
ギリチョコなら今までにも幾つか貰っている・・
まあ、大抵先輩から可愛いからとか、同級生や部活の後輩から面白半分
そんな理由でもらうチョコばかりで
「好きです!憧れています!」なんてチョコは一度も無い

バレンタインデー当日
朝からチョコを貰った人気者の男子が上機嫌にしているという傍ら
どうせ今年も一つも貰えないという連中が「あっそう言えばそんなイベントあったな」とか
「俺チョコ嫌いだし」という痛々しい予防線を張っているのを乾いた気持ちで眺めていた。
もしかしたらミキがくれるかな・・そんな事を考えなかったわけじゃないけど
期待するだけ裏切られた時のショックは大きい・・と諦めていた。

教室でも義理チョコのやり取りが大っぴらにしかも頻繁に行われてた。
女の子同士で交換したり男子に小さい奴を配る子も居た。

朝ミキは挨拶だけしてそのまま自分の席についた
休み時間もそんな素振り一つも見せなかった。

そんなミキが昼休みに今年卒業の3年の先輩にチョコをあげたという話が
僕の耳に入ってきた。
噂好きの子がはなしているのを偶然聞いてしまった。
3年の陸上部の一井先輩・・他校生からも毎年チョコを貰うイケメン・・
(やっぱりな・・)と思った。
どんなに日ごろ仲良く話していたって、ミキも俺みたいなチビより
身長180cm以上で大会にも出てるような男がいいに決まってるよな・・当然だな・・
お似合いだよ・・そういえば一井先輩もミキと同じ大学の推薦だった。

世界に一筋の光すらも差さなくなった気がした。
そんなくらい気持ちでいるとミキが僕の所へやってきた。
「佐藤君・・ちょっといい?」
「・・なに・・」
「あの・・コレ・・」
ミキはそういうとチョコレートの入った箱をポケットから取り出した。
「あっ!ミキ佐藤にチョコあげてんの?!」

それを目ざとく見つけて騒ぐ女子
「あ、あの・・」
ミキが慌てる
「でも、ミキって3年の一井先輩に告ったんじゃないの?」
女の子が興味深々で聞いてくる
「えっ・・あの・・」
ミキが真赤になる
「バカね、佐藤のは義理にきまってんじゃん!」
「一井先輩にあげたチョコ方が箱大きかったしね」
同じ女子バレーの子が気を使ったのだろう、ミキを庇うように割ってはいる
「佐藤は日ごろミキの代わりに委員の仕事してるから、ねミキ」
「あ・・えっ・それはそう・」
「ホラ見なさい!」
「なーんだつまんないの、でもまあそうだね佐藤君じゃね」
「ないよね」と小声で言う女子の声
クラスメイトも口々に「佐藤だしな」とか勝手な事をいって席に戻ってしまった。

「あの・・佐藤君・・」
2人取り残された僕とミキ
「いらない・・」
悔しかった・・泣きたいほどに悔しかった。
「えっ・・」
「俺はチョコが欲しくて委員の仕事してきたわけじゃない、だから要らない」
「でも・・」
「要らない」
なおも何かを言おうとするミキをさえぎるように言う
そのまま席を立って教室を出て行く
ミキは追いかけてはこなかった。

そのまま昼休みが終わるまで屋上で空を見てた。
大声で叫びたい・・
口まであけて叫びそうになった所で、やめてそのまま拳を握りしめてうずくまる
放課後机を見るとチョコレートの箱が入っていた・・・
ミキが僕に渡そうとした物だった。
僕はそれをとるとそっとミキの机の中に入れ家に帰った。

次の日から僕達は一切話をしなくなり
僕はミキの顔を見れなくなっていた。

一井先輩とミキはアレからもよく2人で話しているところが目撃され
バレンタインデーから一井先輩が卒業するまでの間、僕も一度見かけた。
1階の渡り廊下でなにか親しげに話す2人を僕は二階の窓から見下ろしていた。
2人は付き合っている、この頃クラスの人間なら皆そう思っていた。
ミキが限りなく遠い存在になった・・ミキを見ているだけで心が締め付けられるようだった。

3年の毎日は勉強の毎日
そんな中ミキと数人の推薦入学者は早々と大学の練習に参加するため
良く学校を休んだ
ミキを見ているだけで辛かったのに、ミキの席がガランとしているともっと辛かった。
もう諦めなければならないのに、毎日のようにミキの姿を探している自分が情けなかった。

このままミキと二度と話さなくなって
どんどん凄い選手になっていくミキが一井先輩と仲良く大学生活を送っている夢を見た。
そんな苦しさから逃げたくて毎日ミキのことを忘れたい一心で勉強に打ち込んだ
毎日殆ど眠れなくて日に日にやつれて行く僕を両親や担任もちろんクラスのやつ等も
心配しだした。

「おい、佐藤おまえ顔色悪すぎるぞ」
「佐藤大丈夫か?」
心配してくれる人たちに、僕は「大丈夫」とだけ答えた。
誰にもいえない・・誰にも言いたくなかった

学校で模擬テストが終わった直後だった。
答案用紙集めて教壇に持っていこうとしたときだった。
急に目の前が真っ暗になって真横にぶっ倒れて気を失った。
確かに朝から頻繁に立ちくらみがするとは思っていた・・
意識を失う瞬間 体の真ん中の芯がプツンと切れるような感触がして
あ・・・俺・・死んだかもと思った。

直ぐに病院に運ばれた。
次に意識を取り戻した時には病院のベットで点滴をうたれていた。
「受験生だからと言って頑張りすぎはいけませんよ」
医者の話だと極度のストレスから来る寝不足と栄養失調で暫く安静らしい
「幸いテストの結果は良かったから、数週間休んでも大丈夫だ、少しは体を休めろ」
担任の先生がクラスメイトからの花束を持ってやってきてそう告げた。

病院のベットでなんだかリタイアした老人のような気持ちになっていた。
ベットの上で身を起こして窓から毎日遠くの景色を見て過ごした。
何もする気が起きなくて・・不思議と腹だけはすいた。
親がかなり心配してくれて、母のために元気になろうと思えた。
ミキの事はもう頭に無かった。
(忘れよう・・つまらない劣等感も・・悲しさも全部思い出にしてしまおう)

そう思っていた・・・・

コンコン
病室のドアがノックされた。
「はい?」
そう返事をするとドアがそっと開いてミキが入ってきた。
「・・・・・・」
言葉がでなかった。
諦めたばかりなのに・・ミキの顔を見ただけで涙があふれてきた。
握り締めた拳に涙がポタポタと落ちてきた。
「佐藤君・・大丈夫?」
ミキがベットの脇に置かれた椅子に座る
「ずっと合宿だったから・・友達から昨日聞いて戻ってきたの・・」
何処かホッとしつつも寂しい声だった。
「本当はココにはこない方がいいと思ったんだけど・・佐藤君のことが心配で・・」
僕より広い肩が震えていた。

「何度もちゃんと言わなきゃと思ったんだけど・・・言い出せなくなって・・・」
「これ・・・」
そういってバックからミキが取り出したのはあの時のチョコレートだった。
「これ・・・」
「あけてみて・・」

包みをひらいていくと中には不恰好なチョコレートと一枚の便箋が入っていた。
「それが私の本当の気持ち・・」
ミキが言う
便箋には一言だけ書かれていた。

「ごめん・・ミキ俺は・・俺は・・」
つまらない意地から捻くれて勝手にいじけて
情けなくてミキに申し訳なくて・・涙が止まらなかった・・
弱った体には泣くことすら厳しかった。
ミキは静かに頷くと手を握ってくれた。

「佐藤君は怒るかもしれないけど・・聞いてくれる?」
だまって頷く
「私ね高校に入って直ぐ怪我しちゃって、怪我自体は大したこと無かったけど、休んでた間に凄く調子を落としてた時期があったの」
「何も上手く行かなくて落ち込んでて、部のメンバーにも迷惑かけてて」
「私本当は1年生の時部活やめようかって思ってたんだよ」

「知らなかった・・」
1年の時から一緒に委員をしてきたのにそんなことがあったなんて知りもしなかった。
「でもね、佐藤君があるとき何かの話で言ったんだよね」
「俺は身長が低いけどソレを1度言い訳にしちゃったら、ずっとソレを言い訳にするようになってしまう気がする」
「何か欠点なら改善できる、でも身長は改善できないだろ・・だから身長を理由にはしたくないんだって」
「凄く勝手だけど自分より小さいくて頼りないと思ってた佐藤君が、凄く確りしてるように見えた。」

「その時からかな・・佐藤君のいう事とかする事を真剣に見るようになったの・・」
「毎日身長差のある人たちと弱音吐かずに対等に張り合って頑張って諦めなくて」
「江川先生も静岡先生も、アイツのあの才能は学校1だって言ってたんだよ」
「うそだぁ・・」
思わず言う
「本当だよw」
ミキが笑う

「だから早く良くなって・・残りの高校生活、佐藤君と少しでも長く過ごしたいから・・」
「うん・・」

「あっ!」
「あとね、一井先輩にあげたのはコンビニで買った奴なの、あの人高校最後だからクレクレってしつこいから」
「・・・・・・・」
唯一の気がかりを見透かしたようにミキが付け加える
「初めての手作りは佐藤君にあげたかったから・・」
ミキが耳まで真赤にする

「ごめん・・ありがとう・・俺みたいな奴にそんな風に言ってくれて」
「こら!またそういうネガティブ言わない」
「ごめん・・」
「自分がす、好きになった人がそんなだとなんか寂しいじゃない・・」
「ごめん・・」
「ほら!!また謝る!!もう謝るの禁止!!」
「ご・・」
また性懲りにもなく謝ろうとする僕の口をミキの唇が塞ぐ

一瞬だったけど効果は抜群だった。
「禁止」
真赤な顔でニコッと笑うミキ
「はい・・」
ソレがとっても可愛く思えた。
「へへw佐藤君のファーストキス奪っちゃったw」
「・・・・別に初めてって言った覚えないけど・・」
「そっか・・初めてじゃないの?」
「・・・・・・初めてです。」

「よかったw私も始めてだったんだ・・・」
「・・・・・・・・・・・」
ミキの手が優しく僕の手を握る
「元気になったらまたしようね・・」
「うん・・・」
「遠距離でもいいから大学行ってもしようね」
「うん・・」

「あっ!」
ミキが急に思い出したような声を上げる
「えっ?」
「あとね、私の事デカイって言うの無しね!」
「は?」
「他の人ならいざ知らず好きな人に言われると落ち込んじゃうのよ」
「身長はお互い治せないんだから気にしない事いい!?」
「うん」
「あと」
「まだあるのかよ・・」
「あのね・・たまには佐藤君のこと後ろから抱っこしたいなw」
「おまえなぁ・・・・・・・」
「ダメ?」
「・・・・・・」
「・・・たまに・・なら・・」
「ふふw」
僕の渋々の言葉にミキは満面の笑みを見せた。
その笑顔とキスが点滴以上に僕を元気つけた気がした。

・・・・・・・・・・・・・・最後に・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・・

退院後ミキとの交際は順調で
いつの間にかクラスでも公認の仲になった。
最初はビックリしていたクラスメイトも
「まあ、確かに言われて見れば佐藤は真面目だもんね」と
周囲の反応は現金なものだった。

2人手を繋いで並んで歩くとよく姉と弟に間違えられた。
でも前のように気にしないと思えるようになった。

高校最後の文化祭僕とミキ主演で眠り姫をやった。
凄いいやだったけど押し切られてしまった。
デカイお姫様にチビの王子様、シリアスなシーンで多いに笑いを取った。
今では良い思い出になっている

県外への大学進学で運よくミキの通う大学の近くに希望に近い大学があった。
かなりの名門だったが、それこそ死ぬような思いで勉強してなんとか現役合格できた。
両親は、彼女のお陰だと喜んだが
ミキは僕が元来の努力家だからだと誉めてくれた。

ミキはバレーの大学生選手として期待され毎日頑張っている
恋愛ご法度なんて言われてたのは随分昔の話で
最近は節度を守っての恋愛は自由のようだ
僕も無理して入った大学のカリキュラムに追われるし
ミキも強化選手として忙しいから中々合えないけど僕等なりに上手く行っていると思う

僕のアパートで会う事が多いけど
そういう時はミキに抱っこされるようにして色々と悩みを聞くのが毎回のパターンだ
意外に泣き虫なミキは僕を後ろから抱きしめつつ寂しいとか言うけど
コートの中では微塵もソレを感じさせないプレーをしている
本人曰くそれがバランスなのだという
エッチの相性は良いと思う、大きな体に似合わずミキは従順なMなので
大きな体のミキを後ろからせめるとき等は興奮する
嫌がらずに奉仕してくれるし、とっても尽くしてくれる良い子だ
ちょっと精力旺盛すぎるから僕もかなり鍛えていないといけないけのがたまにきずだけど

という事で余談な部分はこの辺で終わり 読んでくれてありがとう