学校裏サイト横行 ネットいじめ、国が監視強化

産経新聞11月29日(火)7時55分配信

 学校裏サイトなどで小中高生がインターネット上でいじめにあったり、犯罪に巻き込まれたりするケースが相次いでいることを受け、文部科学省はネット監視を強化する方針を固めた。すでにネット監視の指針となる資料集の策定に向けた作業に着手。いじめ認知件数が増加に転じる中、急速に普及するネットへの対策を講じる必要があると判断した。

 文科省は今年度中に「学校ネットパトロール資料集(仮称)」を取りまとめ、全国の教育委員会に配布する。教師の間でネットに関する知識に差があることを考慮し、「インターネットの基礎知識」として、有害サイトを閲覧できなくするフィルタリングの仕組みなどを解説。自己紹介サイト「プロフ」や小中高生に人気がある会員向けゲームサイトなどの説明も加えた。

 文科省によると、平成18年度以降、減少傾向だったいじめ認知件数は22年度に初めて増加に転じた。学校裏サイトやプロフを利用したネットいじめも約3千件報告された。このため、東京都教委や三重県教委などはネット監視を強化し民間業者に委託。ほかの市町村教委や学校もパトロール要員を配置したり、授業の空き時間に監視したりして対処しているが、対応にはばらつきがみられるという。

 資料集では、監視対象にしているサイト▽人員や頻度、予算状況▽警察や保護者との連携?などの項目について、すでにネットパトロールを導入している教委に依頼し、事例集を掲載することも検討している。

 子供たちのインターネット環境をめぐっては、学校裏サイトやプロフがいじめや犯罪の“温床”とされ、学校だけでなく自治体が監視を強める傾向にある。だが、日々進化して急速に普及していくネット環境に、関係機関の対応は追いつかなくなっているのが現状だ。

 内閣府の調査によれば、携帯電話の所有率は小学生で20・3%、中学生は47・8%、高校生が95・6%となっている。このうち大半がネットを使用。中学生の7割、高校生の半数が有害サイトが閲覧できないようにするフィルタリングをしている。

 警察当局の努力や携帯電話会社など関係機関のPRによりフィルタリングは浸透したが、高機能携帯電話(スマートフォン)の普及によってさらなる対策を余儀なくされている。

 これまでの携帯電話では、ネットに接続する際に携帯会社のサーバーを経由するためフィルタリングが可能だった。しかし、スマートフォンでは無線LANで一般のネットを閲覧することが可能だ。機種によってはフィルタリングソフトを使用すれば閲覧制限をかけられるが、対策は十分とはいえない。

 内閣府調査では中学生の5・4%、高校生の7・2%がスマートフォンを所有。まだまだ数としては少ないが、スマートフォンの学生向け割安プランなどもあり、今後はさらに所有率は高まるとみられる。

 子供も夢中になる、ゲームを売りにしたインターネットの会員制交流サイトの対策も急務だ。

 愛知県警は、ゲーム内通貨を使用して仮想空間内を散策したりする交流サイト「アメーバピグ」に他人のパスワードで不正アクセスしたとして、小中学生8人を不正アクセス禁止法違反容疑で摘発。福井県警も小学4年の女児を補導した。

 現実の金銭被害がないことなどから生徒らに罪の意識はなく、ゲームに夢中になったがゆえの犯罪で、愛知県警は運営元の「サイバーエージェント」に対策を要請。子供をネットの被害から守るだけでなく、ネットを悪用することによる加害者にさせないことも必要となっている。

 文部科学省の担当者は「ネットや携帯は日々進化しており、現在の対策が1年後に役に立つとは限らない。ネットパトロールの指針もブラッシュアップしていかないと追いつかない」と話している。

 【学校裏サイト】 学校が公式に立ち上げるサイトとは異なり、児童・生徒や卒業生らが独自に開設した掲示板。既製サイトや個人ブログに立ち上げて自ら管理し、匿名や仮名で学校に関する自由な話題を勝手に書き込む。部外者がアクセスできないようパスワードが設定されていたり、携帯電話からしかアクセスできなかったりする。学校関係者や親はサイトの存在自体を知らないことが多い。