「よ、よーし。最後はおれだな」
 邦夫はしならせた男根で太腿を叩きながら浴槽を出た。朱美と向き合い、睨みを利かせる。だが、たじろいだのは邦夫の方だ。
 朱美の潤んだ瞳は妖しく輝き、一心にこちらを見詰めている。それは他でもない。挑発する女の顔だった。
「ど、どうした? のぼせたのか?」
「ええ、なんだか雲の上にいるみたい……。ふふ、さっきからふらふらしているのよ」
 朱美の目尻が下がっている。ここにきて初めての笑顔だった。羞恥や恐怖が消え去ったわけではない。それを覆うほどの高揚感に支配されているのだ。いまや、あの夏の日を喚起させる精液臭が朱美を突き動かしている。
「そ、そうか。それじゃあ、ぶっ倒れないうちに頼むぜ」
「ええ、そうね……」
 そう笑った矢先、ボディソープを掴もうとして足を滑らせた。
「あっ!」
「わっ!」
 巻き添えを食った邦夫が最初に転び、そこへ朱美が倒れ込んだ。朱美の巨尻が邦夫の腹を押しつぶす。
「ぐっ!」
「え? やだ!」
「い、いててっ! は、はやくどけろ!」
「ご、ごめんなさい!」
 濡れた体は油を塗ったように滑り、朱美は手足をばたつかせるだけで起き上がれない。下敷きになった邦夫は痛いことは痛いのだが、柔らかい尻に敷かれてまんざらでもないようだ。
「あっ!」
「おっ?」
 朱美が両脚を踏ん張った拍子に、邦夫の男根が臀裂にぴたりと納まった。
「お、これいいな! た、たまんねえぞ!」
「や、やだ!」
 もはや擬似セックスの範疇を超えていた。ほんの少し位置と角度を変えるだけで繋がってしまうのだ。焦れば焦るほど足はもつれ、手がすべり、邦夫の男根を臀裂でこねくってしまう。
「おっ! おおっ! い、いいぞっ!」
 射精の予兆を感じ取り、朱美が慌てふためいた。
「ま、待って! ちょっと待って! ねえ、待ってったら!」
「で、でるぞーっ!」
「やだ! ちょっと!」
 間一髪、朱美は尻を持ち上げた。解き放たれた男根はぶるんとしなり、逃げる尻を打ち落とさんばかりに精液を発射する。鞭となった白濁は朱美の尻を真横から両断した。
「ひっ! いいいっ!」
 熱さは痛みでもあった。精液は尻を打ちすえただけでなく、臀裂の狭間にまで侵入してきたのだ。股間を汚されたショックに朱美はおののき、その場にうずくまってしまった。
「く、邦夫くん、やっちゃったの? ちんぽ、入っちゃったの?」
「ば、ばーか。入るわけねえだろ。ちょっと擦っただけだ」
 つまりは擦っただけで射精してしまったのだ。照れ隠しのつもりか、邦夫はうずくまったままの朱美に優しい言葉をかけた。
「よ、よお、大丈夫か? どこか痛くしたんじゃないのか?」
「あ、ごめんなさい。なんでもないの……。邦夫くんの方こそ怪我はない?」
「お、おれは平気だって。おまえ、ほんとに大丈夫か?」
「ええ、ちょっとびっくりしただけだから……」
 立ち上がりながら、朱美は自分の体に目を落とした。腹部を伝い陰毛を濡らす精液を手始めに、顎や乳房、果ては太腿までまんべんなく少年たちの欲望が塗り込められている。もちろん、臀裂の奥も例外ではない。
「ふーん、びっくりねえ……。よーし、じゃあ仕上げは顔面か?」
「あ、でも、続きを……」
「聞いてなかったのか? 顔面に出してやるって言ったんだ」
 邦夫は手早くシャワーを済ませると、仁王立ちになった。
「そこに座れ。正座だ。ザーメンシャワーはいやか?」
「い、いえ……」
 朱美は素直に正座した。三人分の精液がまぶされたこの体には、守るべき尊厳はもうどこにもないのだ。
「よーし、それでこそ美雪ちゃんが喜ぶってもんだ」
 邦夫が悪友たちに目配せする。阿吽の呼吸で雄太が立ち上がった。いまだ勢いを失わない男根を握っている。
「えへへ。朱美さん、今度はぼくがかけてあげるね」
 康二も慌てて後に続く。
「お、おれだってまだ出るぞ!」
「よーし、みんなでぶっかけようぜ」
 三人は扇形に朱美を取り囲んだ。腫れ上がった男根をものともせず、猛烈にしごき始める。狙うは打ちひしがれた人妻の美顔だ。
「朱美! 顔を上げろ!」
 男根をしごきながら、邦夫が怒鳴る。
「目はつぶっていいけど口は開けてね!」
 一番の巨根をゆったりとしごき、雄太が笑った。
「で、で、でるっ! く、く、くちっ!」
 康二ははやくも感極まって、ろれつが回らない。次の瞬間、一向に薄まらない精液が朱美のショートヘアにぶちまけられた。
「あーっ、くそっ! なんで顔を上げねえんだ! 次はちゃんと飲めよ!」
「つ、次はおれだ! 朱美、口で受けろ!」
 邦夫が少しずつ前進している。仁王立ちのままでも、腰の振動で前に出てしまうのだ。
「お、おいっ! 口開けろっ! 口だっ!」
 邦夫の絶叫は届かず、はぜた精液は朱美の頭頂部をかすめてしまった。邦夫は暴れる男根を力づくでねじ伏せ、断末魔の滴を朱美の頭にぼたぼたと垂らし始めた。
「こ、この野郎! 奴隷のくせに歯向かいやがって!」
 邦夫は朱美を足蹴にして倒すと、その顔を跨いだ。
「おら! おら! これでも食らえっ!」
 男根を根元から絞り込み、最後の一滴まで朱美の顔面に落としてゆく。
「ぼ、ぼくもっ!」
 そこへ雄太も加わった。勃起した男根が下を向かないため、少し距離を置いて朱美の顔面を狙っている。まさに肉の大砲だ。
「顔だ! 雄太! 顔を狙え!」
 邦夫はそう叫んで、朱美の喉元を踏みつけた。これでもう、顔を伏せることができない。
「やっ! いやあっ!」
「で、で、でるよっ!」
「いけえっ!」
 肉筒を構えた雄太が身を反らした。直後、白濁液が放物線を描き、朱美の左目を横切るや、見事唇に着弾した。
「ひっ!」
「朱美さん! 飲んで! ぼくの!」
「むっ! むむむっ!」
「飲んで! 飲んでったら! 飲んでよ!」
 混じり合った三種の精液が朱美の顔面を覆っている。深く息をすれば鼻を詰まらせかねない量だ。
(……お、終わったの?)
 目を塞がれた朱美は懸命に周囲の気配を探った。直後、邦夫の罵声が飛んできた。
「おまえ! もう帰れ!」
「え? あ、あの……?」
 精液溜まりの中で朱美はもがいた。取り急ぎその場に正座し、精液まみれの顔を声の方へ向けると、薄目越しに洗面所で体を拭いている少年たちの姿が見えた。
「ザーメンも飲めねえやつ用なしだ! さっさと帰れよ! おまんこ奴隷失格だ!」
 演技を差し引いてもかなりの激昂ぶりだ。精一杯奉仕したつもりが本気で怒らせてしまったと慌て、朱美は精液溜まりの中で土下座した。
「ご、ごめんなさい。つ、次はちゃんとやりますから……」
「次ってなんだ?」
「あ、あの、次の命令にはちゃんと従います。ですから、どうか……」
「けっ! どうせまた尻込みしちまうんだろ? 結局はお上品な奥様だからな」
「い、いえ。もう逆らいません。絶対に逆らいません」
「本当だな?」
「はい」
「もう次はないぞ?」
「はい。わかっています」
「よし。じゃあ五分だ。五分以内に体を洗って、二階に上がってこい」
「はい」
「部屋には裸でくるんだぞ。素っ裸だ。いいな?」
「は、はい」
「おっぱいやおまんこを手で隠したら承知しないぞ。できるか?」
「はい」
「本当か? 大丈夫か?」
「だ、大丈夫です」
「まあ、帰りたきゃ、帰ってもいいんだけどな」
「い、いえ。大丈夫です」
「おれたちのちんぽ、まだまだ硬いぜ。全然満足してねえんだ。満足させてくれるんだろうな?」
「……はい」
「すけべなことを手取り足取り教えてくれるんだよな?」
「は、はい」
「そうか、そりゃ楽しみだ。よし、上で待ってるから、おまんこをきれいにしてこいよ」
「……は、はい」
 言葉の鞭で朱美を打ちのめした邦夫は、仲間を引き連れて洗面所を出て行った。
(……ああ、みじめだわ)
 一人残された朱美はシャワーを全開にして、まずは顔面の汚濁から取り除いた。若さを持て余している少年たちが二度三度と精を放ったのだ。夫が一度に出す量に比べたら優に十倍を超している。
 視野が開けると、否応なしに鏡に映った自分を見なければならない。セックス奴隷に堕ちた現実はもはや夢でも幻でもなかった。
(わたし、これからどうなるの……)
 途方に暮れる朱美だったが、残された時間は少なかった。とにかく体中にこびりついた精液を落とすのが先決だ。と、朱美はあることに気づき、恐るおそる淫裂を指で探った。
(ああ、やっぱり……。でも、こんなに濡れるなんて……)
 火照った肉襞は煮崩れたように柔らかく、朱美の指先に絡みついてくる。しかも、お湯のような愛液がこんこんと湧いていた。
 おまんこをきれいにしてこいよ??。邦夫の言葉が脳裏を過った。
(ああ、もう!)
 頭髪に一分、全身に一分、そして性器には二分の時間を割り振って、朱美は洗浄に取り掛かった。中学生に犯されるために、膣の奥の方まで指を入れて中を掻き出し、ぬめりと臭いを取る。
 さらには陰毛の手入れは十分だったか? 毛深いと笑われるのではないか? そんなことを考えながら、肛門周辺にも指を伸ばした。そして不思議な気持ちになるのだ。夫に抱かれる夜、自分はこんなにも身だしなみに気を遣っていただろうか、と──。
(パパ、許して……。パパは一度も浮気しなかったのにね……)
 溢れる涙をシャワーで流し、朱美は浴室を出た。意外にも服とバッグがそのまま置かれている。その気になればここから逃げることができるのだ。少年たちに性の奉仕をしないで済む……。
(あっ!)
 衣類をかき集める朱美の手が止まった。逃げ出そうかと迷う朱美をからかうように、下着だけが持ち去られていたのだ。
(残酷ね、子供って……)
 裸でくるんだぞ。素っ裸だ──。それが命令だった。
 朱美はワンピースとバッグをジャケットでくるみ、洗面所を飛び出した。真夏だというのに背筋に張りつく冷気は、他人の家中を全裸で歩き回る背徳感だろうか。
 残り時間はない。朱美は小走りに廊下を進み、階段を上がった。子供部屋のドアが見えた。あの向こうに三人の淫餓鬼がいる。幼い男根をしごいて熟れた女体がやってくるのを待っているのだ。
 体奥がじんと痺れた。洗い落したはずの精液臭が幻覚となって鼻腔を突く。ドアの前に立った朱美は二度逡巡してから、三度目にノックした。ドアは開かず、邦夫の声だけが返ってきた。
「ぎりぎりセーフだな。おまんこはちゃんと洗ってきたか?」
「あ、はい……」
 手荷物を足元に置き、念のために股間を探ってみた。
(やだ、あれだけ洗ったのに……)
 指が震え、全身が桜色に燃えた。にじむどころではない。そこはぬかるんでいたのだ。発情した牝の生殖器そのものだった。
「どうした? 入ってこいよ」
「……あ、はい」
 指先のぬめりを膝裏で拭い、ドアノブに手をかけた。
(パパ、美雪ちゃん。ママ、がんばるからね……)
 恥部を隠そうとする手や、よじれてしまう下肢を意思の力で押え込み、セックス地獄へ続くドアを開けた。エアコンの冷気が火照った乳房や股間を撫でて階下へ抜けてゆく。
 朱美は顔を伏せている手前、努めて背筋を伸ばした。少年たちの射るような視線がひしひしと感じられる。乳房に腰に股間に、三対の視線は突き刺さり、絡みついているのだ。
 少年たちはなぜか声を発しない。不安になった朱美は顔を上げて、息を呑んだ。
(や、やだ……)
 雄太が正面のベッドで自慰に耽っていたのだ。持ち去った朱美のショーツを男根に巻いて、やみくもにしごいている。目が合ってしまった。
「えへへ、ちょっと抜いておこうと思って。本番で長持ちしたいからね」
 慌てて目を逸らすと、今度は康二の自慰が飛び込んできた。壁に寄りかかり、一心に男根をいじっている。康二のおかずはブラジャーだった。鼻に押し当てたり、口に含んだりしている。
「うー、人妻の匂いがぷんぷんするぜ。これ、香水じゃないよな? あんたのおっぱいの匂いだよな?」
「あ、いえ……」
 目のやり場に困った朱美はうつむいてしまった。とんでもないところにきてしまったと、膝が震え出して止まらない。そんな朱美の心情を知った上で、邦夫は言葉で嬲る。
「よう、なんで帰らなかった?」
「あ、それは……」
 椅子に座った邦夫は一人だけ自慰をせず、あやとりをするようにパンティストッキングを弄んでいる。だが、剥き出しの男根は自慰の必要もないほどいきり立っていた。
「ノーパン、ノーブラじゃ帰れないか? お上品な奥様は?」
「そ、そんなわけじゃ……」
「じゃあ、なにしにきたんだ? すけべな裸を見せびらかしにきたのか?」
「あ、その……」
「な・に・し・に・き・た・ん・だ? はっきり言えよ」
「あ、あの……」
 朱美も十分に知っていた。邦夫はもちろんのこと、自慰を続ける雄太たちが聞きたがっているのは、清楚な人妻の口から出る卑猥な言葉なのだ。
「あ、あの……。わたしは、その……」
「え、なんだって?」
「み、みなさまのお相手にまいりました……」
「なんのお相手?」
「あ、その……」
 恥じ入る朱美の姿は三十路を感じさせないほど愛らしい。全裸の人妻が両手をもじもじさせ、羞恥と必死に闘っている仕草はまるで叱られている幼女のようなのだ。
 勃起した男根をびくんと脈動させて、邦夫が語気を荒らげた。
「な・ん・の?」
「あ、あの、その、セ、セ……」
 少年たちの視線が朱美の口元に集中した。ルージュがすっかり落ちた生の紅唇が震える。
(ああ、聞きたいのね? 言わせたいのね? 恥ずかしい言葉を……)
 気持ちの昂ぶりとともに、朱美の眼前に桃色の霞が下りてきた。全身はエアコンの冷気を跳ね返してしまうほど熱くなっている。熱源は子宮だ。体奥でくすぶっていたおき火が一気に燃え上がったのだ。
(ああ、熱いわ。なんて熱いの……)
 体奥の赤熱は膣道を伝い陰核や陰唇をも焦がす。量感溢れる朱美の下半身が自然にうねり始めた。室内は十分過ぎるほど冷えていたが、肌に玉の汗が浮かんでいる。
「き、きみたちの……セ、セックスの相手にまいりました」」
「お、おれたち、童貞なんだぜ……。あ、あんたが教えてくれるのか?」
 康二は涎まみれのブラジャーを口元から外し、上ずった声で尋ねた。男根を握る右手は動いたままだ。
 朱美は目を合わせ、小さく頷いた。
「え、ええ。わ、わたしがきみたちに、セ、セックスを教えるわ」
「ほ、ほんとか? フェラチオとかアナルセックスも教えてくれるのか?」
 康二の右手に力がこもる。自慰の追い上げに入ったのだ。
「も、もちろん、きみたちが、そ、そう望むなら……」
「い、言えよ! アナルもオーケーって言えよ!」
 怒気を含んだ康二の形相に、朱美は反射的に応えてしまった。
「ア、アナルもオーケーです」
「う、うおっ!」
 射精に間に合った。いや、朱美の言葉が最後のひと押しになったのだ。精液は見事な弧を描いて飛び、カーペットの染みになった。
「へ、へへっ……」
 康二は朱美を見つめながら、射精の余韻を味わっている。朱美もまた、はしたない言葉の連呼で半ば惚けていた。その朱美の顔が引きつった。康二がブラジャーで後始末を始めたのだ。
(や、やめてっ!)
 朱美の胸が締めつけられる。精液に汚されるブラジャーは他でもない、朱美の分身だった。
「あ、朱美さん! ぼ、ぼくにも言って! く、口でしてあげるって!」
 今度はベッドの上の雄太が悲鳴を上げた。青筋を浮かべるほどに硬直した男根をショーツでしごき、ねじり、凌辱している。もみくちゃにされるショーツもまた、朱美の分身だ。
「あ、朱美さん! 言って! はやく!」
「え、あ……」
「言って! 言ってよ! 口でしてあげるって!」
「し、してあげる! 口でしてあげるわ!」
 瞬間、雄太が極まった。布の膣と化したショーツに白濁がぶちまけられる。甘い残り香と苦い精液臭が混じり合い、脳髄を溶かすほどの性臭が完成した。雄太は最後の一滴までショーツに吐き出してから、その臭いを胸一杯に吸い込んだ。
「えへへ、いよいよ本番だね。ぼく、さっきからどきどきしっぱなしなんだ……」
「え、ええ。わたしもよ……」
 朱美の全身に玉の汗が伝っていた。こうして距離を置いて眺めると、均整の取れた骨格や見事な肉づきがよくわかる。やはり、中学生の童貞喪失用には過ぎる、宝物に値する美女なのだ。
「ほら、ぼさっとしてねえで雄太の相手をしろよ」
「……あ、はい」
「荷物を忘れんな」
「あ、すみません」
 ワンピースとバッグをドアの外に置いたままだった。朱美は太腿をぴっちり合わせて後ずさり、それらを拾った。恥部を手で覆えない以上、太腿を合わせることでしか股間を隠せない。
 朱美はよちよち歩きで室内に戻ると、ドアを後ろ手で閉め、手荷物は出窓の上に置いた。それからごくりと唾を飲み込み、ベッドの方を見る。雄太もまた、手にしたショーツをきつく握り締めて、緊張と戦っていた。
(ああ、いよいよなのね……)
 左手には壁に寄りかかった康二が、右手からはいすに座った邦夫がにやにや笑ってこちらを見ている。卑屈さは服従の裏返しだ。せめて精神だけは汚されるものかと、朱美は背筋を伸ばし、顎を上げ、胸を張った。
「村田のけつが八十点なら、朱美は九十五点だな。ほんと、たまらねえけつだぜ」
「へへっ、一体なにが詰まってんだか……。もしかしてまん汁十八リットルか?」
 言葉嬲りを振り切るように、朱美が歩き出す。
 ベッドまで七歩。その間、邦夫と康二は目を皿のようにして、眼前を通過する女体のすべてを脳裏に焼きつけた。全裸の女が歩くとき、どこの肉がどのように弾み、揺れるのか──。若い脳細胞は貪欲に記憶する。
 七歩の苦行を終えて、朱美がベッド脇に辿り着いた。乳房や股間を惜しげもなく晒したまま、雄太を見下ろす。
(まあ、もうあんなに……)
 たったいま自慰を終えたばかりだと言うのに、雄太の男根は七割方の回復を見せていた。しかも、接近した女体に反応して、見る間に鎌首をもたげてゆく。
「えへへ、たっぷり抜いたから、本番は長持ちするよ」
 その声があどけないだけに、朱美を心から震撼させた。まだ中学生の少年は、初体験を済ませるというだけではなく、自分の体を存分に愉しもうとしているのだ。
(あ、この臭い……)
 臭気の元は雄太が手にしたショーツだった。朱美の残り香と混じり合った精液が布地から染み出し、空気に触れているのだ。そこに子供部屋特有の汗臭も加わり、朱美の鼻腔をしびれさせてゆく。
(ああ、あの臭いだわ。あの夏の日の臭い……)
 朱美の体内に十五年前の熱い夏がよみがえる。セックスを覚えた高三の夏休みだ。それがいまここで繰り返される──。
(あっ!)
 爛れた予兆に子宮がひくっと脈打った。肉体はまだ気づいていないのだ。ここが夫婦の寝室ではなく、陵辱の檻だということに……。いや、とうに気づいているのかもしれない。そうでなければ、なぜ体奥がこんなにも熱いのだろうか?
(ち、違うの……。家族のためなの……)
 朱美はそう自分に言い訳しながら、小さなご主人様を見下ろした。
「あ、それじゃあ、始めるわね」
 雄太は小さく頷いた。
「よ、横になってくれる?」
「こ、こう?」
 雄太はベッドの上で大の字になった。仲間うちでは最大を誇る男根がぴんとそそり立つ。驚くべき回復力だ。
(す、すごいわね。奥まで届きそう……)
 思わずつぶやきそうになり、朱美は慌てて口元を覆った。
(わたしったら、なんてことを……)
 じっとりと重い靄が思考を細切れにしているのだ。朱美は目をつむり、これからすべきことを心の中で反芻した。それを三度繰り返してから、意を決して邦夫の方に向き直る。
「ん、なんだよ?」
「あ、あの、セ、セックスをするときは避妊が……」
「それはBが終わってからでいいだろ」
「あ、でも、大事なことだから……」
「後でいいって言ってるだろ」
「で、でも……」
「帰るか? そうか、そんなに帰りたいか?」
「あ、いえ……」
「じゃあ、続けろよ。おれたちによく見えるようにな」
 邦夫はこともなげに言い、康二を促して床の上に座り込んだ。邦夫が先を急ぐのにはわけがある。実のところ、一番手を雄太に譲ったのは場所を提供した見返りではない。雄太を実験台に、自分の初体験を上首尾に済ませようという魂胆なのだ。
「あ、それじゃあ、最初は前戯から……」
「つまり、Bってやつか?」
「そ、そうよ」
「へへっ、Aはいいのか? 省略すんのかよ?」
 康二も茶々を忘れない。
「あ、その、前戯にはキスも含まれるのよ」
 朱美はベッドの端に腰かけた。みしっとベッドが軋んだ拍子に康二が呟いた。
「へへっ、でかいけつだ。おれたちのけつだぜ……」
 朱美はその声をあえて聞き流し、大の字になっている雄太の顔を覗きこんだ。
「ゆ、雄太くん」
「は、はい」
「わ、わたしが下になるから、雄太くんは上になって」
「え、ぼくが?」
 雄太は不服そうに頬をふくらませた。性知識はいくら豊富でもしょせんはオナニー三昧の童貞なのだ。失敗がなにより怖い。悪友二人に見物されていてはなおさらだ。
「あ、あのね、普通は男の子が上になるのよ。大丈夫。わたしに任せて……」
「お、男が上になるってだれが決めたの? ソープじゃ、女の人が上になるんだよ」
 雄太の頬がさらにふくらんだ。男根は成人並みなのに、中身はまだまだ子供なのだ。朱美は恨めしげに睨みつけ、小さなため息を漏らした。
「……わかったわ。じゃあ、そのまま寝てて」
 朱美は膝を崩して横座りになった。小振りながらたるみのない乳房が雄太の鼻面に迫る。一方、邦夫たちの目には深い溝を刻む双臀が映っているはずだ。
 朱美は左肘で上体を支え、数時間前までは家事に勤しんでいた右手を少年の体に伸ばした。男は夫しか知らない朱美だ。その右手は処女のように震えている。
 だからこそ、朱美は歯を食いしばった。夫のため、娘のため、そしてなにより自分のために……。