こないだの日曜に遠くの街に遊びに行ったときに、たまたま寄ったコンビニで、大学時代の遊び友達に偶然再会した。ほぼ5年ぶりに会ったが、あまりの変貌ぶりにびっくりした。最初は、全く気付かなかった。あのケンジがこうも変わるとは・・。
こないだの日曜に会ったケンジは髪型もさえないボサボサ頭になり、名札の曲がったよれよれの制服を来て、もう一人の店員に細かくダメ出しをされながら、モソモソと仕事をしていた。人を卑屈に上目使いで見るようになっていた。ケンジが俺に気づいたかどうかは分からない。

俺は元々やんちゃしてて、やんちゃ仲間のケンジも同じ高校、同じ大学(どちらも誰でも入れるようなバカ学校だけど・・・)に通っていた。
その頃のケンジは、いわゆるイケメンで、ガタイもでかく、180センチ以上あった。サーフィンやスノボが得意で、色黒く日焼けし、頭は金髪のモヒカンで決めていた。俺もケンジもいわゆるちゃら男だった。当時は俺も女好きでいろんな女を食いまくっていた。面白いように、いろんな女とエッチすることができた。
ただ、ケンジには変な性癖があった。彼氏がいる女や人妻にしか興味がなかったのだ。彼氏のいる女をむりやり飲みに連れて行って、そのあとホテルに連れ込むというのがケンジの手口だった。それでも、その場限りの遊びだったら、女にとってもすぐ忘れてしまえるような小さな思い出になったかもしれない。だけど、ケンジの始末に悪い点は、彼氏のいる女をガンガン抱いて、自分好みの性奴隷に仕立て上げてしまってから、ボロ雑巾のように捨ててしまうことだった。俺も当時はいいかげんな人間だったが、その点は好きになれなかった。ケンジから何人、そういう洗脳された女を紹介されたことか(もちろん、即座に断ったが)。


ある日の晩、いつものように繁華街でケンジと一緒にナンパする女を物色していると、突然5人くらいの屈強な男たちに囲まれた。一見してヤクザ者であった。

「なんだよう、てえーら」
ケンジはいつものようにすごんで見せたが、普通の男にはケンジの威嚇は通じても、ヤクザには全く通じなかった。
ヤクザはにやりと笑うと、ケンジと俺に殴りかかってきた。倒れたところに蹴りもいれられる。俺もケンジも喧嘩は相当強いほうだと思っていたが、ほとんど抵抗できずにぼこぼこにされたのは初めてであった。

「おめーら、ちょっと乗れや」
俺とケンジは車に乗せられて、人影のない倉庫のようなところに連れ込まれた。

倉庫に着いたら、またぼこぼこにされた。
顔がはれあがっているのがわかる。体中に痛みがあった。芋虫のように転がっていた。

「こいつらですか」
朦朧とした頭を上げると、はれあがった瞼の隙から、俺たちの前に一人の若い女がいるのがみえた。誰だ?
「あ、あっ」
声を出したのはケンジの方であった。俺も思い出した。


あれはつい10日くらい前のことだった。
俺は別の遊び仲間といたが、ケンジが連絡があった。ケンジの家に行ってみると、ケンジは見慣れない女と一緒だった。女の肩になれなれしげに手を置いている。女は緊張のせいか震えている。メガネをかけた、かなりまじめな感じの若奥様風の女だった。
「この女、俺のセフレだけど、お前らにもやらせてやるよ」
「またかよ」
俺は怒りを感じ、舌打ちをした。俺の連れがケンジの誘いに乗ろうとしたが、俺はそいつの腕をつかんで無理やり連れて行った。
「なんだよ、せっかくこの女にいろんな芸をしこんだのに。こいつはなんでもやるんだぜ。犬みたいにチンチンもやるんだぜ」
「ケンジ、いいかげんにしろよ。見ろよ。こいつ、かわいそうに泣きそうになっているじゃないか」
俺はそのままケンジの家を出てきてしまった。無理やりというのは俺の趣味に合わなかった。

「この人は助けてあげて」
女の声が聞こえた。ヤクザたちに話している。ヤクザたちの足音が俺から遠ざかっていくのが聞こえた。俺は力なくうつぶせになって、顔を床につけている。
ヤクザたちはケンジを取り囲んだ。再びぼこぼこにされるケンジ。
「た、たすけて、たすけてください」
ケンジは必死に許しを求めたが、男たちは容赦がなかった。
「しかし、おめえもヤクザの女房に手を出すとは大した度胸だよな」
「ひ、ひーっ。お助けを」
「うるせーっ」
ヤクザの中に女の亭主がいたかどうかは分からなかった。話の感じからは、服役中のようでもあった。
「おい、こいつのズボンを脱がせろ」
ケンジはズボンを脱がされるようだった。
「た、助けて、助けて」
ケンジの泣き声が響く。
「ちんぽ詰めてもらうからな」
「ひ、ひー」
ジョキンというような金属の音とともに、「ぎゃー」というケンジの叫び声が聞こえた。
ケンジはハサミで大事なところを切られたようだった。俺は恐怖で震えていた。
「切ったちんぽどうします?」「トイレにでも流しておけ」というような会話が聞こえ、またケンジがぼこぼこにされる音が聞こえた。
最後に、「おい、もう二度とヤクザの女に手をだすんじゃねぇぞ」というセリフとともにヤクザたちはぞろぞろと倉庫を出ていった。

俺はしばらくそのまま横たわって様子を見ていたが、おそるおそる灯りの消された中を起き上がった。
ケンジはそのまま死んだように動かない。
近寄って見ると、かすかなうめき声が上がっていたので生きているようであった。
俺はそのとき早くここから脱出した方がいいような気がして、そのままケンジを置いたまま倉庫から一人抜け出してしまった。


顔の腫れが引いてから大学に行ったが、ケンジは来ていなかった。なんとなくケンジと連絡が取りづらくなり、連絡していなかったが、1ヶ月くらいしたときにケンジと偶然、大学の近くで遭遇した。ケンジはかっての遊び人のイメージはなくなり、背中を丸めてこそこそ歩いている感じだった。オーラが落ちたというか、まったく女っ気がなくなっていた。話しづらくなり、挨拶を軽くしたくらいで終わった。

ケンジとはその後、駅の方で一回偶然見かけたくらいで、いっさい見かけなくなった。噂で大学を退学したと聞いた。
俺はあの恐怖の体験から、精神的に大きく変わったことがある。
大げさかもしれないが、暴力のこわさ、むなしさを感じ、多くの女と遊ぶことの危険を思い知ったのである。

俺は髪型や服装を変え、大学には毎日のように通うようになった。当初は急な変化に奇異な目で見られたりもしたが、少数いる真面目な学生たちと付き合うようになった。また、あんなバカ大学でも有名大学から流れてきた先生の中には教育熱心な方もいて、俺はゼミなどでそういう先生の薫陶を受けるようになった。先生のアドバイスで、語学や専門知識を磨いた俺はなんとかその大学からはめったに入れないそこそこの会社に入社することができた。